今回は以下の過去記事の続きです。
システム・シンキングという考え方には、目に見える現象や、そのパターン、構造が関わっていると書きました。そのことについてもう少し詳しく書いていってみます。
システムの4層構造
p.45
システムは、もっとも目に見えやすい「出来事(現象や事象)」のレベル、それらの動き方を時間経過で追った「パターン」のレベル、そしてそれらのパターン因果ループ的関わり合いを明らかにする「構造」の3つのレベルから形成されています。
「システム」というのは、上記の引用文のようになっているようです。前回は都市の「交通」の例をあげました。
「システム」を「交通」に例える
引用文の内容に当てはめて考えてみると、出来事は目に見える歩いている多くの人や、行き交う車や電車と言えます。
パターンは、信号機が青になった場合は車が走りますし、赤になれば車が止まって横断歩道を人が渡れるようになる、という風に決まった間隔、パターンがあります。
その構造は、交通ルールや信号機という機械の仕組み、機能から成り立っていると言えると思います。
今回は自分なりにわかりやすいように、「交通」という例を挙げてみましたが、本書ではもっといろいろ書かれています。
システムの第4層━メンタル・モデル
次に重要なのが本書では「メンタル・モデル」とあり、本書では次のように書かれています。
p.56
システムは出来事、パターン、構造の3層からなるとお話しましたが、その根底には4層目が潜んでいます。これは目に見えるものではなく、私たちの考え方のなかに存在しており、
その意味でこの4層目までを含めた考え方をシステム・シンキングと呼ぶのです。この4層目に潜む「考え方」の部分を、メンタル・モデルと呼びます。
上記の図はわかりずらいかもしれませんが、本書から引用した図は明確には書かれていませんが、「氷山」をイメージしていると思われます。
氷山は、海面上に浮かんで人間の目に見える範囲ではそれほど大きなものには見えません。ですが、海面下にあるその本体は、表面に見える大きさの何倍もの大きさになります。「氷山の一角」という言葉でも使われたりします。
本書の図からわかることは、私たちが生きているこの世界には、人間の心理である以下の四番目のメンタル・モデルというものが、一番深い部分で関わっています。
- 出来事(現象や事象)
- パターン
- 構造
- メンタル・モデル
どんな心理状態かによって、目に見える現象も変わってくるということです。先程書いた「交通」の例で考えれば、日々問題なく生活できている多くの人の心理には長期的視点として「安全」というメンタル・モデルが働いていると考えられます。
もしみんなが短期的視点となり、信号の色や車の往来など関係なく、自分中心の考えでルールを無視したら事故が多発するでしょう。
メンタルモデルを通して企業を見た場合
p.58
X理論が中心の企業では、勤怠管理については厳しいルールがあったり、目標もノルマという形でトップから一方的に与えられたりします。
一方Y理論が中心の企業では、時間管理は自己管理が中心で、目標も自主的に設定するなどの特徴があるでしょう。
上記の引用文は「X理論・Y理論」についてのことで、D.マグレガーという人物が示した企業の人間の能力開発についての対立的な考え方です。
D.マグレガーのX理論・Y理論
もう少し詳しく書くと、X理論とは、「人間は本来怠け者で仕事が嫌いである。だから監視や強化をして仕事をさせなければならない」という考え方。
対してY理論は「人間は自ら努力し目標を達成する意欲を持つものである。そのためその人の行動に任せたほうがよい」といった考え方です。
この現実世界には、みんなX理論というわけでもなく、みんなY理論というわけでもなく、「どちらでもいる」と思います。
その人の精神や考え方が、その人の周りの現実になっている
上記の引用文を最初目にした時、今までの経験から「その人の精神や考え方が、その人の周りの現実になっているよなぁ」と感じました。
引用文の通りで、努力しない人は嫌でも「努力させられる世界」にシフトしていっているし、自分から努力する人は「努力しなくてもいい世界」(本人が自分から努力して、他人から努力を強要される必要がないという意味)
にシフトしていっている気がします。他の人はどう感じるかわかりませんが、自分の今までの経験からなんとなくそうなっていっていると感じます。
最初p.56の図を見た時は「なるほどなぁ」と思いました。システムからどういう結果が出てくるのかは、人間の心理が深いところで関係しているということです。
目に見える事象やそのパターンも、元を辿れば人間の心理が関係していると。
目に見える現象を自分が意図したものにしたいと考えるのであれば、人間の心理をそれに対応した考え方に変える、改善する必要がある、ということです。
ここまでのまとめ
私たちは目に見える現象から対策を立てるのではなく、そのシステム全体の構造を理解して、その中の根本的な部分に焦点を合わせる、というのが本書の思想の着眼点となっています。
普通であれば、目に見えるものに対して何らかの対応をすると思います。しかしそれでは、根本的、長期的な解決にはならないとのこと。
自分が意図した結果ではない、というような「反直感的」な現象が出てきた場合、自分たちの物の見方や意思決定自体が間違っているのではないかと疑ってみた方がよいということです。
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