最近からというわけではないですが、工場での効率性や生産性以外に本社の側でもいかに効率よく生産性があげられるかどうかということがニュースなどで取り上げられるようになる時代になってきました。
長時間労働や働きやすさ、もっと言えば現在の日本社会の閉塞性からの脱却において今後変えていかなければならない問題ということでしょう。
もう少し具体的に言うと、効率性や生産性を上げなければならないのは「ホワイトカラー」と言われる人たちの仕事です。この人達の生産性は世界の国々と比較するとかなり低いと言われています。
逆にブルーカラーの人たちの生産性は「トヨタの『改善』」に象徴されるように世界でも非常に高い生産性を誇っています。
効率をあげるとか生産性をあげるというと、じゃあ具体的にどうすればいいのか、と考えてしまうかもしれません。
そもそも効率性とか生産性という言葉は「工場での作業における言葉」です。つまりは工場労働とか生産管理について学ぶ、特に工場労働において非常に高い生産性を誇る日本の生産管理を学び、それをホワイトカラーの分野に応用することはかなり有効なのではないか、とういことです。
今回はこのことについて以前から思っていたことを書いていってみます。
工場での作業と事務作業の違いについて
今までであれば、工場での業務だと「この部品を何個使って、何時間で、何個の製品ができたか、そのためのコストがいくらかかったか」というのが明確に数値として表すことが出来ました。
ですから「時給」という発想は工場で働く場合は有効なのです。
一方本社の側の事務作業などは、ひとつひとつの業務を工場のように明確に区切るということが難しいのです。
例えば月末の支払業務の場合、各取引先からの請求書を整理して表を作り、インターネットバンキングを利用して支払うというのが一連の流れです。
しかし、請求書を100枚整理したから100円もらえる、というわけでないですし、支払先が1000社あるからその分の作業量として1000円かかるとか、1000個の製品ができるとか、そういった考え方はできないわけです。
経理業務といっても結構他部署の人とコミュニケーションが必要であったりと、要は時間当たりの数値ということを考えると人によってかなり恣意性が入ってきてしまうのです。
要は工場ではある程度どの製品がどれくらいの時間で何個できるのかというのはある程度予想が立てられけど、事務作業とか営業などの仕事は人によってかなり結果が違ってくる場合がある、といことです。
こういった考え方、捉え方からホワイトカラーは「裁量労働制にしろ」とか、「本人の生産性によって給料が支払われるべき」とか「ホワイトカラーエグゼプション」といった議論がされるわけです。
だからといって、例えば経理業務が工場労働と全く違うのかと聞かれるとそうでもありません。日々やること、毎月やること、毎年やること、といのはだいたい決まっています。
自分の感覚でも「これって工場での作業とそれ程変わらないのではないだろうか」と思うこともあります。
「コンカレントエンジニアリング」とは
中小企業診断士の受験科目には「運営管理」というものがあります。この科目は以下の2つに分けることができます。
- 「生産管理」
- 「店舗・販売管理」
以上の2つのことからさらに「工場」と「店舗」についていろいろなことが書かれています。
この「生産管理」の部分に「コンカレントエンジニアリング」という言葉があります。この言葉は自分が中小企業診断士の勉強をするまで知りませんでした。
『中小企業診断士 スピードテキスト (3) 運営管理 2012年度』には次のように書かれています。
p.175
[コンカレントエンジニアリング(CE:Concurrent Engineering)]CEとは「製品設計と製造、販売などの統合化、同時進行化を行うための方法 JIS Z 8141-3113」である。
つまり各部門が電子化されたデータを共有化しながら、協調して工程を進めていく製品開発手法のことである。
各工程の情報が中途段階で即座に他工程に伝達されると同時に、他工程からのフィードバックがなされることにより、リードタイムの短縮や製造コストの削減につながり、生産効率が向上する
製品機能に対する要求が高まるにつれて、技術体系が複雑化し、工程が細分化されるようになった。その結果、これまでの直列的な開発プロセスでは生産効率の低下が避けられない状況となっている。
今回なぜこの言葉を取り上げたのか。要は仕事を同時並行的にやれると早く終わらせられるということです。それは経理業務とか事務作業でも同じではないかということです。
エクセルが動かない!?でもその間に・・・
今の会社で働き始めてから数ヶ月が経ちますが、最初の頃とは別の仕事をするようになりました。そこで直面したのは「特定の表でよくエクセルが動かなくなる」という問題でした。
理由はだいたいわかっています。それは外部の店舗からの更新作業があるためです。
ひとつやふたつの店舗であればまだいいのですが、それがかなりの数でさらに更新作業も多いとなると、こちらのエクセルの表もその更新作業に負荷がかかるというか、表が開けるようになるまで結構時間をとられるのです。
最初のうちは仕事を教えてもらっていたので、エクセルが動かない表の所まで進んでも、むしろメモする時間ができてありがたいぐらいに思っていました。
ですが、段々と自分ひとりでできるようになると、止まってしまうエクセルの表がどうしても気になってしまいます。止まっている間は手持ち無沙汰になるというか、「この間何かできることはないだろうか」と考えます。
「表が動かないなら、マニュアルでもつくっておくか」ということで他のエクセルの表を開こうとするのですが、これが開きません。おそらくいつも止まってしまう特定の表の影響でしょう。
「それなら勘定奉行(会計ソフト)での作業を進めておくか」とこちらの作業を進めようとしてもこちらも動きません(唖然)。
「えっ!?なにこれ?動かなすぎでは!?」と呆気にとられながらも、それでも他に何かできることはないかとパソコンをいじっていた時でした。
ある時インターネットは動くことに気づきました。おそらく勘定奉行やエクセルは自分のパソコンに組み込まれているからその影響があるけど、インターネットは完全に外部のシステムだから影響がないのでしょう。
そこでインターネットを利用し、最初の業務のもうひとつ後にある「口座残高確認」をしました。
自分の中でのここでのポイントは、勘定奉行が止まってしまう前に予め当日の預金残高表を印刷してしまうことです。そうしないと後の作業もできなくなってしまうからです。
今まではエクセルの特定の表が止まってしまって、それ以降何もできない時は一連の作業が終わるまでに終日かかっていましたが、エクセルが止まっている間に別の作業をできるようにすることで午前中に終わらせられるようになりました。
もちろん単純に「仕事を覚えてきたから」というのもあると思いますが、同時並行的に作業を行うという発想も有効だったのではないでしょうか。
通常多くの人はひとつのことを終わらせてから次の作業に進みます。自分もいろいろな職場を経験しましたが、同様のやり方で仕事を進めるように職場の指揮者から指示されます。
コンカレントエンジニアリングの所で引用したように、ひとつの作業が終わってから次の作業に入るというように「直列的」なプロセスではかなり時間がかかる場合もあります。
今回コンカレントエンジニアリングと仰々しい言葉を使いましたが、今回自分がしたことは別に難しいことではありません。非常に単純なことです。
「今それができないなら別のことをする」というだけです。
現実の世界では、ひとつのことができなければ待ってしまう人の方が多いのではないでしょうか。
実際自分に今の仕事を教えてくれた人も「この表動かないんですよね。」と言って、いつも頬杖をつきながら次の作業ができるようになるまで待っていました。
以下の過去記事では「電車に乗っている人を見て気づいたこと」という項目で、藤原和博さんが電車内で本を読まない人についてどのように考えているかを書きました。
藤原さんの考えもそうなのですが、電車内にいる人は十人十色です。寝ている人もいれば、スマホでゲームをしている人もいます。しかしそういった時間にも他に何かできることはあると思うのです。
しかし現実はほとんどの人がなにもしていません。藤原和博さんも『成熟社会では本を読まない人は生き残れない』で本を読むことを「生き方の選択」と書かれていましたが、「あぁ、そうだな」と思いました。
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