知識の倉庫の整理

ここでは今まで学んできたことや考えたことなどを整理、記録していきます

チェス盤の法則と睡蓮から考える現代のコンピュータの指数関数的成長について

最近は、エリク・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーの『機械との

競争』と井上 智洋さんの『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』を読んで

いました。


どちらも、最近よく話題にされる人工知能とかコンピュータとかロボットなど

の最先端の機器について書かれているという点で共通していますが、以前から

この本を読みたいと思っていました。


この二つの本を読み進めて気づいたことがありました。それは今回の記事のタ

イトルとして書いた『チェス盤の法則と睡蓮から考える現代のコンピュータの

指数関数的成長について』です。


以前から疑問に思っていたというか、なんとなく頭の片隅には残っていました。


チェス盤の法則とか睡蓮が池の半分を埋め尽くした後のこととか、要は数を倍

にしていくとどうなってくかということです。


自分の中では、「なんとなくのかけ算のおもしろさ」ぐらいの認識しかありま

せんでした。ですが、なぜ最近こういった例え話をよく目にするのかが本書を

読むことで段々とわかってきました。


今回はそのことで思ったことを書いていってみます。

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チェス盤の法則とムーアの法則について


「チェス盤の法則」というものについて『機械との競争』には次のように書か

れています。

p.40

最近のコンピュータの進化を理解するうえで一つ知っておくべき法則は、言う

なれば「チェス盤の法則」でえある。


(前略)


その逸話とは、こういうものである。チェス盤を発明した男が王様に献呈した

ところ、王様は大層喜び、望みの褒美をつかわすと言った。そこでこの賢い男

は米を所望し、チェス盤の最初のマス目に一粒、二番に二粒、三番目に四粒…


…という具合に、前のマス目の倍の米を置いていき、その合計を賜りたいと申

し出た。


王様はたやすいことだと承知したが、実際には倍、倍とただ置いていくだけで

米粒は途方もない量になった。最終的には、米粒の数は二の六四乗マイナス一

粒になったのである。


これは、積み上げればエベレスト山より高い。一杯くわされたことに腹を立て

た王様は男の首を刎ねてしまった、という言い伝えもある。


(後略)


「三二マス目、すわなちチェス盤の半分に来たところまでに王様が与えた米粒

の数は四〇億粒だった。これは大きな競技場程度で、王様が臣下に賜る褒美と

してはまずまず妥当である。しかしこのあたりから、王様は事態に気づき始め

る」

引用したような数の増え方を「倍々ゲーム」とか「指数関数的成長」と言った

りします


このような数の増え方は最初は、ありふれた直線的な増え方のように見えます。

ですが、時間の経過とともにチェス盤の法則で言えば残り半分に入ってから、

人間の感覚的な見通しからは驚くような増え方に転じていきます。


何が言いたいかというと、今回の記事では、我々の生活で身近なものとなった

コンピュータの成長にその法則が当てはまるということです。


コンピュータの性能の成長の仕方に「ムーアの法則」と呼ばれるものがありま

す。これは簡潔に述べると「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という法則

です。


もう少し詳しく書くと、アメリカのインテル社の創業者のひとりであるゴード

ン・ムーアが1965年に論文で発表した法則です。大規模集積回路の製造・生産

における長期傾向から発見された指標と言われています。


つまり、コンピュータに使われるCPUの性能は18ヶ月ごとに2倍になっていくと

いうものです。


しかし、2017年現在は微細化による限界が近づいてきているとも言われていま

す。


要は半導体は一定の空間に回路を詰め込んでいくという形なのですが、物理的

にこれ以上は小さくできない所まできており、それに伴い消費電力が下がらな

いという問題と、微細化を実現する工場の建設コストによる経済的問題が出て

きてしまっているようです。


とはいうものの、各種最近の統計データを見る限りでは、今の所はムーアの法

則が大きく崩れてはいないということや、今までは2次元の平面上でつくられて

いた半導体を最近では3次元の立体でつくっていくという方法がとられていたり

と、ムーアの法則はもう少し続きそうです。


ムーアの法則は聞いたことはありました。ですが、チェス盤の法則が昨今の技

術の成長度合いを例えていたとは全然気づきませんでした。そして重要なこと

は、今はそのチェス盤の法則において「半分を過ぎた」と言われていることで

す。

睡蓮が池を埋めつくす時

チェス盤の法則やムーアの法則に似たもので、池で毎日2倍に増えていく睡蓮

の葉の例え話があります。


インターネットでいろいろと調べてみると、この話の出所は詳しくはわからな

いのですが、その中のひとつはフランスの「29日目の恐怖」の寓話にあるよう

です。その話は次のようなものです。



ある日のこと、大きな池に1枚のハスの葉が浮かびました。

2日目には2枚に、3日目には4枚に、という具合に、1日ごとに倍々で

ハスの葉は増えていきます、そして29日目。

とうとう大きな池の半分がハスの葉で埋まりました。


では大きな池にハスの葉が池を満たすのは何日目になるでしょうか?池の半分

を満たすのに29日かかったので、その2倍の58日目でしょうか?


いいえ、この話の答えは「30日目」です。1日ごとに倍々に増えていくので、

池の半分に達したハスの葉は次の日に池の全てを満たしてしまうということで

す。


2012年6月に富士通が完成させたスーパーコンピュータの「京」というものがあ

り、その次世代のスーパーコンピュータとして「睡蓮」というものがります。

この睡蓮についてはこのブログの過去記事で書いています。

何が言いたいかというと、チェス盤の法則とかハスの葉の増え方といった指数

関数的成長を表現するために「睡蓮」といった名前をつけたのかなぁと最近に

なって思いました。


実際はどうかはわかりませんが、この「指数関数的成長」というのはいろいろ

と考えさせられるということです。

1958年から2006年にかけて32回倍増している

「チェス盤の法則とムーアの法則について」の項目では、最初の部分の増え方

はたいしたことはなかったが、チェス盤の半分、つまり32回目の倍増の時にと

んでもない数値になっていたと書きました。


それが『機械との競争』において我々が生きる現代の世界では、32マス目に到

達した年は2006年にあたると書かれています。詳しい部分を引用してみます。


p.43

ではコンピュータの産業利用において、私達は進化の過程のどの位置にいるの

だろうか。もうチェス盤の残り半分に突入したのだろうか。この質問に正確に

答えることはできないが、合理的な推測をしてみると興味深い結論に達する。


米商務省経済分析局(BEA)が設備投資の対象に「情報技術」を加えたのは、

1958年のことである。そこで、この年をIT元年と考えることにしよう。そし

て、ムーアの法則による集積密度の倍増ペースが18ヶ月ごとだと仮定する。


すると、32回倍増した年、すなわちチェス盤の32マス目に到達した年は、

2006年ということになる。

チェス盤の32マス目の米粒に狼狽した王様の話を書きましたが、本書ではチェ

ス盤の残り半分を進むにつれて登場するデジタルイノベーションのいくつかの

最初の例を次のように挙げています。

  • グーグルの自動運転車
  • ワトソンのクイズ番組での勝利
  • 高品質のリアルタイム機械翻訳


2012年にはカナダのトロント大学が物体の認識率を競うILSVRCにおいて、ディ

ープラーニングという手法を使ってエラー率を従来よりも劇的に改善し、人口

知能の分野でブレークスルーを起こしました。


さらに睡蓮の所でも書いたように、将来的なエクサスケールコンピュータの実

現に見通しが立ってきました。


このような話題以外に我々の日常生活においても、段々とその技術の進歩の早

さというものを目の当たりにするようになってきました。


例えば自分が経験した範囲でも以下の過去記事に書いたような事例があります。

以上のような事例を見ると、確かに指数関数的な成長というのも自分のような

一般人でも体感できるようになってきた感じがします。

コンピュータの指数関数的成長と現代に生きる人々への影響について

「なるほど、言われるまで全然気づかなかった・・・。」

というのが、自分の中での率直な感想です。


自分が小学生ぐらいの頃は、今のように本で得られた知識やペッパー君のよう

な日常生活でも見かけるようになったロボットが実現されるのはもっと数百年

ぐらい先のことだと思っていました。


例えば今でも多くの人に人気で歴史のあるアニメとして「ドラえもん」があり

ます。ドラえもんの誕生日は連載初期は2012年となっていたようでうが、現在

は2112年9月3日とされており22世紀となります。


当時の自分の身の回りの環境やドラえもんといったアニメの設定からも、自分

達の生活空間が漫画やアニメのように全く変わったものになるのは、数百年先

になると思っていました。


ですから自分が生きている間は、ずっと同じような生活が続くのだろうなぁと

未来に対して子供心に漠然としたイメージを持っていました。


ですが、最近の周りの環境の変化や今回の記事で書いた指数関数的成長の事例

を知ることで、自分が数百年先になるだろうとイメージしていたことが、実は

そんなに先でもないのではないかと思ったのです。


指数関数的な増加がグラフを見てもわかるように、我々の生活も気づかないう

ちに一気に変わってしまうときが来るのかもしれません。