この世界には「諸行無常」といった言葉があります。その意味は、この世に存在するものは、全て同じ状態のものはなく変わっていく、というものです。それは人間の世界における「権力」がわかりやすい例でしょう。
前回はヨーロッパの領主と農民においてパワーシフトという権力の移行が起こった話を書きました。
キュレーションとは
今回はその事例の一つとも言えることについて自分の考えを交えながら書いていきたいと思います。前回は『キュレーション 収集し、選別し、編集し、共有する技術』という本を紹介しました。ちなみにキュレーションは辞書手的には
「インターネット上の情報を収集しまとめること。または収集した情報を分類し、つなぎ合わせて新しい価値を持たせて共有することを言う。キュレーションを行う人はキュレーターと呼ばれる。」
という意味になります。その本の中の一文が今回の記事と関係あるので引用します。
パブリッシングは新しい教養(リテラシー)
「私が『パブリッシングは新しい教養(リテラシー)だ』と言うのは、キュレーションは素材を改善し、編集し、事実チェックをするうえで何らかの役割を果たしているからです。
何かを公衆に向けて発信するという活動は、以前は、限られた方法しかありませんでした。つまり、ラジオ局やテレビ局、印刷機などをもっていなければどうにもならなかった。
しかし、今日では、インターネット・カフェや公立図書館へのアクセスさえあれば、どこからでも自分の考えを発信できるようになっています。」
引用ここまで
次に最近話題になっているフジテレビの状態に関する記事を引用します。
ジリ貧のフジテレビ、視聴率は盛り返せるか テレビ単体が上期赤字、営業費に大ナタ
「収益柱の苦戦は深刻だった。フジ・メディア・ホールディングスが10月30日に発表した2015年4~9月期決算は、売上高が前年同期比1.7%増の3117億円、営業利益が同48.5%減の49億円。
純利益は同58.2%減の50億円と増収減益だった。11月4日に開かれた決算会見で、嘉納修治社長は冒頭のコメントとともに『非常に厳しい決算になった』と語った。」
引用ここまで
TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ
さらに次の資料を引用してみます
主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2017年)(最新) – ガベージニュース
上記の記事にあるグラフは「TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ」とのことです。1990年頃の人間にとって、将来、まさかテレビ局の権威が失墜し、経営的に行き詰るようになるとは思ってもいなかったでしょう。
このような状態になるには、やはりインターネットという技術やスマートフォンなどのモバイル機器の台頭があります。少し前はインターネットは既存のマスメディアの脅威にはならないといった論調がありました。
しかし、今のこの状態を見ると、その言葉は間違っていたと言えるでしょう。
プロからアマに権威が移行している
単にインターネットやスマートフォンに視聴率や広告費がシフトしているというわけではないと自分は考えています。今はコンテンツの制作において「プロからアマに権威が移行」している状況であると言えると思います。
youtubeやニコニコ動画では個人が面白い動画をつくる
今までであれば、テレビのチャンネルという限られた番組しか選択肢がありませんでした。しかし今はyoutubeやニコニコ動画など、個人が制作した面白い動画がたくさんあります。
むしろ、これを個人が作ってしまうのか?と言えるぐらい質が高いものもあります。以前書いた記事に、インターネットによって「価格を比較できるようになった」といったことを書きました。
それによって、今まで高いお金を払わされていたものが安く買えるようになったと。それによって努力を怠ってきた企業は価格を下げざるをえなくなりました。前回の記事を引用するのであれば、個人が「複数の選択肢を持てるようになった」と言えるでしょう。
インターネットによって経理という職種の認識と何が必要かがわかった
それはものだけでなく「人」にも言えると思います。自分のことになるのですが、インターネットがなければ、まず経理なんて仕事には就けなかったと思います。そもそも経理という職種を結構な年齢になるまで存在自体を知りませんでしたから。
そんな無知蒙昧な自分がインターネットという新しい技術を使えるようになったことで、会社という組織の中には経理という仕事がある、その仕事に就くためには簿記2級の知識が最低限必要である、ということを知ることができるようになりました。
冒頭部分で引用したキュレーションという言葉がありますが、様々な資料を引用して、このように自分の考えをブログという媒体を通して発信することができるようにもなりました。
逆の視点から見れば為政者側にとっては、今のような状態は脅威でしょう。今まではあまり努力をしなくても利益を得ることができていた。しかし、歴史上このようなことは何度も起きており、近い将来既存のマスメディアは淘汰されていくか、そうでなくても縮小を余儀なくされていくでしょう。
他にもいろいろ事例はあるのですが、「新たな技術」によって、今まで暴利をむさぼっていた権威の側が、その既得権益を失うという事象は自分にとっては非常に痛快であり、おもしろいと感じます。
自分は技術というものの「機能」にも魅力を感じているのですが、それ以上に新たな技術が生まれることによってもたらされる「影響」というものがどんなものなのかを知るようになって、こんな世界があったのかとわくわくするようになりました。
今後も新たな技術に関して自分なりの視点で記事を書いていきたいと思います。
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