今回は以下の過去記事と同様な事例を取り上げて生きたいと思います。
この事例でも思うことがあるのでつらつらと書いていきます。
シェールガス革命
「なにしろ、1キロワットあたりのコストが、石油10円、風力20円、太陽光35円というのに対し、シェールガスはたったの6円なのだ。しかも埋蔵量が少なくとも150年分、実際には300年以上もあるともいわれている。なおかつ、CO2排出量は石炭に対し40%、石油に対し15%も少ないのだ。」
「シェールガスを取り出すためには2000メートルも掘り下げるわけであり、この圧力に耐えられる鋼管パイプは、新日鉄住金など、日本の鉄鋼メーカー以外には作れない。シェールガスを精製して気体から液体、液体から気体へとリサイクルを行うが、このプラントは住友精密工業と神戸製鋼しか作れない。
一番難しいのはアルミの穴あけなのだ。技能オリンピックで十数年連続金メダルを取る日本の「匠」の技術の一つが、アルミの穴あけなのだ。シェールガスを収納する運搬容器には炭素繊維が使われる。この分野は東レ、帝人、三菱レイヨンの国内勢が世界シェアの約70%を握っており、ここにも強い追い風が吹くのだ。
また、シェールガスは大型タンカーで輸送することになるが、ここでモノをいうのがアルミの厚板であり、これまた古河スカイなど日本勢しか作れない。地中から引き上げてきたシェールガスの原材料に対し、大量の水を使うが、この水量全体を減らすために膨大な窒素を使用することになる。
材料ガス国内最大手の大陽日酸は、笑いが止まらないかもしれない。さらにいえば、シェールガス採掘に伴う工事は土木であり、大型ブルドーザー、各種ショベル、大型トラックが必要になる。コマツや日立建機もまた笑いが止まらないだろう。
そしてまた、これらの建機に使用する超大型タイヤは、世界でただひとつブリヂストンにしか作れないのだ。」
引用ここまで
日本には世界シェアNo.1の企業がたくさんありますが、そのような企業がつくる製品でないと機能しない分野がたくさんあります。そのひとつが昨今言われるようになったシェール革命ですね。
シェール革命とは、技術革新によって、従来難しかった頁岩(けつがん=シェール)と呼ばれる硬い岩盤に閉じ込められた天然ガスや石油を取り出せるようになったことを言います。
水圧破砕法
そのシェール革命を可能にした技術が「水圧破砕法」と言われています。これは、wikipediaによると以下のような技術です。
「頁岩層に分布しているガスは岩の中に分散しているためそのままでは流動せず、坑井を掘削しただけでは取り出すことができない。そこで掘削後に海水などを高圧で注入し、坑井の周りの岩を破砕することになる。
しかし地下3000メートルは極めて高圧な状態であり、岩を破砕した後もすみやかに割れ目が閉じてしまう。そこで坑井の地層の特徴に合わせた砂などを水と共に岩の割れ目に押し込み、ひび割れを安定化する。
この一連の技術を水圧破砕と言い、亀裂を維持する材料はプロパントと呼ばれる」
引用ここまで
シェールガスを採掘する技術や製品を売る企業は利益を出せていますが、あまりの価格低下にシェールガス開発に投資した商社はかなりの損失を出してしまったところもあるようです。
技術による立場の逆転
今回の事例から、日本は今までできなかったことを「技術」によって可能にしました。それによって市場に大量にシェールオイルとシェールガスが流通し、それに伴い原油価格も下落、資源の選択肢も増えました。
これら一連の出来事によって間接的に資源国になり「立場が逆転」したと言えるかもしれません。技術によって立場を逆転できる、というこの現象が自分にとってはすごくおもしろく感じます。
豊富な資源や資本、広大な土地がなくてもこんなことができるんだな、と。今まで日本は資源が少ないとされ、天然ガスは
- オーストラリア
- カタール
- マレーシア
から輸入しています。
石油は、
- サウジアラビア
- アラブ首長国連邦
- カタール
などの中東の国々。
石炭は、
- オーストラリア
- インドネシア
などから輸入しています。
かつて日本は太平洋戦争で資源がないということで辛酸を舐めさせられてきました。他にも中東戦争によって石油ショックが起こり、それによる混乱もありました。イラク戦争でも原油の高騰が起きました。
原油価格の上昇で日用品の値段にも影響が出てきます。自国で燃料となる資源が取れないということがいかに弱い立場に立たされるかという例だと思います。
しかし、この事例で日本が直接資源を獲得したわけではありませんが、間接的に得られる資源を増やすことができるようになりました。今は市場に原油が過剰に流通しているので、今度は逆に資源が取れる国が価格を引き下げるを得ず損失を出すようになっています。
シェールガスやシェールオイルなど新たな資源を獲得できることを可能にした各企業の技術は日本以外の国の企業ではできないと言われています。例えば以下の過去記事にも書きましたが
「炭素繊維など先端素材の開発を通して考える個人の視点と働き方」
炭素繊維という素材を開発できるようにするのに40年もの研究が続けられてきたと言われています。冒頭には他にもいろいろな企業が書かれていますが、日本の企業のように長期的視点で研究開発をしてきた企業というの外国では少ないのです。
それが不可能を可能にし、競争優位につながり、有利な立場に立てるようになったというのが興味深いです。
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