なぜスピード経営は重要なのか━ファーストムーバー・トップシェアの法則

中小企業診断士2次試験を受ける少し前にとある疑問を持った時がありました。それは、

 

「なぜ権限委譲は重要なのか?」

 

例えば社長に権限が集中していたとして、それを下の層の人間に権限委譲することによって意思決定が迅速化され、売上や利益を上げられるようになる、

 

といった、そんな漠然としたイメージしかありませんでした。

 

「で、権限を下の人間に移譲して意思決定が迅速化されると、具体的に何がどう良くなるの?」と考えた時、自分の中で答えが出てきませんでした。

 

試験が近づいているというのに、これはいかん!ということで、以前この件について調べていた時がありました。

 

いろいろ調べていた所、「スピード経営」という言葉やなるほどなぁと思えた答えがあったので、今回はそのことを書いていってみます。

権限委譲されていないとどうなるか

例えば、会社の社長に権限が集中するとどのような問題が起こるのか。

 

それについては、『平成20年度版 中小企業診断士2次試験 事例攻略のセオリー』に書かれている、平成18年度の中小企業診断士2次試験、事例Ⅳの次の文章を引用してみます。

p.470

各店舗では店長のみが正社員であり、一般店員はアルバイトで、その雇用については社長自らが決定している。

 

また、商品の品揃えについても社長自らが指示を行っているが、企業規模が小さいために、各店舗の顧客層の違いによって品揃えを変えるなどの柔軟で多様な仕入れを行うことが困難であり、今のところ全店舗で画一的な品揃えになっている。

 

一方、日常の仕入れについては店長が在庫状況を見ながら発注している。

ちなみにこの事例に出てくる企業の店舗は、独立系コンビニエンスストアチェーンであり、鉄道の駅前に3店舗、大規模団地のある住宅街に3店舗、ロードサイド(幹線道路沿い)に3店舗という風になっています。

 

店舗ごとにそれぞれ異なった属性の土地に建てられているので、顧客層も違うわけです。そのため売れる商品の種類も異なってきます。

 

この事例の問題では社長に権限が集中しているので、現場に合った品揃えにできず、その店舗の周辺にとっては必要ではない商品が多くなって商品廃棄損が多くなってしまっているという状況です。

 

このような場合一般論で言うと、社長が権限を持っているのではなく、実際の店舗の売上に合うような商品の品揃えにできるように「権限委譲すべき」と考えられます。

 

これは売上を拡大するための「営業面」という視点から見てみましたが、「生産面」という視点でも権限委譲した方が良い場面も出てきます。

 

例えば、工場内でとある製品を生産している時に歩留まり率が悪いといった事例が過去問にありました。

 

この時の答えは、新しく会社に入った有能な現場の課長に権限委譲して絶えざるプロセス改善を繰り返し、歩留まり率を向上させた、といった具合です。

 

仮に現場にプロセスを改善できる権限がなかったらどうなるでしょうか。歩留まり率は一向に改善せず、失敗作がずっと続き、原価が悪いままの状態となります。

 

自分としては、

  • 「どういった時に『権限委譲』という施策が必要なのか」
  • 「なぜ権限委譲がそれ程重視されるのか」

が知りたかったのです。

 

中小企業診断士2次試験の過去問の組織・人事の事例を何度も見てきましたが、年度によって権限委譲が使われたり、使われなかったりします。

 

一応問題として出題されるわけですから、毎年出ていたんじゃ「問題」になりませんよね。

 

自分としては、試験直前までこの点がわかりませんでした。

「スピード経営」は「同じ品質で同じ価格なら速いほうが勝てる」

爆発

上記のような経緯があったので、インターネットでさっそく調べてみることにしました。

 

「権限委譲 なぜ 良い」といった感じで検索していると、いろいろと参考になりそうなサイトが出てきます。

 

ですが、どのサイトの内容も自分の中で腑に落ちないというか、「本当にそうなの?」と思ってしまいます。なかなか具体的な納得できる良い答えを見つけることができません。

 

そういった中で以下のようなサイトを見つけました。

特に自分の中で納得したのが以下の言葉です。

「同じ品質で同じ価格なら速いほうが勝てる」

 

この言葉を見たとき、思わず目から鱗が落ちた気分でした。

 

確かにそうです。昨今は企業間競争が激しさを増し、自社の商品やサービスの差別化を図る必要があります。ですが、特に中小企業などは研究開発や設備投資にまわせる資金や人材が豊富なわけではりません。

 

ではどうするのか。

 

同じ品質でも同じ価格でも「経営を速くする」ことによって差別化を図れる、ということです。

 

例えば、プリンターのインクが欲しかったとします。どうしても今必要というわけではないけれど、なるべく早く使えればありがたい。

 

アマゾンで注文して2、3日待って代金を支払うか、それとも別の方法があって、1時間後に同じ代金で手元に届くのであれば多くの人は後者を選ぶのではないでしょうか。

 

なるほど、これが「スピード経営」というものかと思いました。

 

ファーストムーバー・トップシェアの法則

もう一つ気になった言葉は「ファーストムーバー・トップシェアの法則」です。この言葉の意味は他社より早く行動することで、シェアを取れるという先行者利益を得られるという考え方です。

 

しかしこの点は以下の過去の記事にも書きましたが、メリットもあればデメリットもあります。

それは「先発優位性」と「後発優位性」があります。「後発優位性」について以下に引用してみます。

一般的には先発が有利とされる一方で、後発のほうがリスクを回避できるので有利となる場合もある。後発の優位性の内容としては、次のようなものがある。

  • 需要の不確実性を見極めることができる
  • プロモーションコストを節約できる
  • 模倣により研究開発コストを節約できる
  • 顧客の変化に対応しやすい
  • 技術面の不確実性に対応できる

要は先行している企業を模倣をすることで、様々なリスクを回避できるということです。

 

ですが、現在やこれからは、この「後発優位性」では上手くはいかなくなっていくようです。

 

なぜなのか。それは、技術の発達によって今の時代は様々なもののスピードが早くなっているからです。典型的なのはITとか情報といった分野です。

 

新商品が出てから後に、その商品を模倣した商品を出してももう遅いということです。

 

今は商品のライフサイクルが従来よりも短くなってきています。ある商品が発売され、普及し、陳腐化するまでの時間が早くなっているということです。

 

今は情報が瞬時に多くの人に広がるので、消費者の商品を買うスピードも以前より早ければ、飽和してしまうのも早くなっています。

 

競合他社の商品が売れると分かって模倣しようとしても、模倣した時には既に市場は先行者の独占状態であり、「後発優位性」の利益というのは薄くなってきているということでしょう。

 

例えばマイクロソフトのWindowsが典型的な例でしょう。

意思決定を早くするためにはどうすればいいのか

ここまでで、自分の中で権限委譲や意思決定の迅速化が、企業経営においてなぜ必要なのかがわかってきました。

 

ではそれを実現するために、具体的に何をしていけばいいのか、というの課題になります。そのことについても以下のサイトでは、なるほどなと思える答えがありました。

施策面については複数あるのですが、自分が知りたかった権限委譲について以下に引用してみます。

 2つめに、「意思決定のスピードを上げる」ことがあげられます。組織の簡素化やエンパワーメント(権限委譲)は、意思決定のスピードを上げるために不可欠です。組織の簡素化では、階層組織を減らしてフラットな組織をめざすことが進められています。

 

たとえば米国GE(ゼネラル・エレクトリック)では、9階層の組織を4階層にシンプル化しました。また多くの企業で、「長」を廃止して、マネジャーや主任などの呼称に変更しています。エンパワーメントを推進することで、セルフマネジメントを推進し、長を廃止して監督者を減らすのです。

 

意思決定のスピードを上げる施策として、カンパニー制(社内分社化)、分社化、執行役員制度などを、各社は積極的に推進しています。たとえば、執行役員制度では、役員の人数を10名以下に減らして、身軽な経営会議にすることで、戦略を議論できる体制をめざしています。

 

また、執行役員にエンパワーメントすることで、現場に近いところで意思決定し、意思決定のスピードを速めることをめざします。

 

えぇ、まさに2次試験で問われていたことがそのまま書かれている感じです。これらの文章を読むことで、なぜ今までのような問題が出題されていたのかが分かった気がします。

 

最近のビジネス書では「組織のフラット化」なんて言葉が出てきたりしますが、なるほどそういうことかと思いました。

 

意思決定のスピードを早くできるようにして、商品をなるべく早く市場に投入できるようにして先行者利益を得る、と。

 

カンパニー制や分社化というのも診断士の過去問にあります。これはこの文章を見るまで意味がよくわかっていませんでした。

 

参考書では、本社と新しくつくる製品の事業部は考え方や文化が違う、だから分社化する必要がある、みたいな書き方がされていましたが、あぁそういうことか、と。

 

この記事の前半部分で「店舗の品揃え」の事例を書きましたが、店舗が「会社」になったというイメージでしょうか。

 

元の会社との文化や考え方の違いから、衝突や停滞を避けるために分社化するという目的もあるかもしれませんが、

 

より市場からの要望にスピーディーに対応できるように、「店舗への権限委譲」のように「分社化する」と考えればいいということでしょう。

 

その発想はなかったです。

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