『下流老人』において貯蓄から墓石や墓地の永代利用料で3000万円があっという間に消えるという事例

今回は前回の以下の過去記事の続きです。

前回は『下流老人』を読んで、現在多くの貧困に陥っている高齢者が存在しており、その原因は

  1. 収入が著しく少「ない」
  2. 十分な貯蓄が「ない」
  3. 頼れる人間がい「ない」

ことであり、前回は1の収入が著しく少「ない」について書きました。この記事ではふたつめの、十分な貯蓄が「ない」という問題点について書いていきます。

十分な貯蓄が「ない」とは

現在の高齢者は、長年年功序列の会社で勤めてきて収入も悪くなく、退職金も豊富にもらえて貯蓄も潤沢なのではないか、と考える人が多いのではないでしょうか。

 

本書を読むと、その考え方は合っているようです。ではなぜ十分な貯蓄が「ない」と書くのでしょうか。

健康や病気の子どもの医療費がかさむ

その問題は「健康」や「病気の子どもの医療費」等のために、多額の貯蓄を切り崩さないといけない人が多い、その結果、早期に貯蓄が尽きてしまうという点が指摘されています。

 

そのことについて本書の事例を交えて説明していってみます。

高齢者の健康問題について

疲労している老人

ひとつの事例として本書では以下のように書かれています。

p.160

また、65歳までの約40年間、小さな町工場で働き続けながらコツコツ貯金してきた男性もいる。

 

退職後は、「貯金もあるし、年金も入ってくるから大丈夫だろう」と思っていたが、75歳頃から身体を壊し、医療費の負担が目に見えて増えていった。そしてとうとう78歳のときに、家賃滞納を理由にアパートを追われてしまう。

上記の例のように、コツコツと貯金はしてきて年金収入もある人でも、高齢者はその年齢から体力が衰え、体を壊しやすかったり病気になりやすい人も多いでしょう。

 

日頃からの運動や食事に気をつけることはもちろんですが、このような状態になるのは、そもそも若かかった時代の無理が今になって現れてしまっていると考えられます。

 

ビールなど飲みの席は控えめに

 

会社員としての生活を続けている人は飲みの席が多くなると思います。特に営業など現場に出て仕事をする人は顕著ですが、明らかに飲みすぎだと思います。

 

ジョッキ何杯というレベルではなく、ピッチャーでビールを飲みほす人を見た時は、「さすがにそれはやばいだろ」と感じました。

 

こういった人たちが生きる世界というのは、もうこれは何か感覚が違うのかもしれません。

何日もの徹夜は危険

 

他にも仕事で何日も徹夜したりするなど、若い頃はいいかもしれませんが、その時のダメージが蓄積されていき、高齢者になった時にケガや病気をしやすい体に繋がってしまうと思われます。

 

確かに仕事で必要なことだとは思うのですが、やはり若い頃からの健康を意識した生活は、長期的に見れば豊かな老後を過ごすうえでは大事でしょう。

3000万円があっという間に消える━墓石や墓地の永代利用料

他にも次のような事例があります。

p.61

「そのときの退職金は、だいたい1500万円あったから老後の暮らしも安泰だと思ってね。そこそこ貯金もしていたから、合わせれば3000万円近くはあったかなぁ」と振り返る。

 

3000万円近くあった現金はどこに消えてしまったのだろうか。

 

「3000万円なんてあっという間に消えちゃったよ。俺、天涯孤独でしょ。一人だから誰にも面倒を見てもらうことができない。だからせめて墓くらいは自分で用意しておこうと思ったわけ。

 

営業に来た会社に、墓石や墓地の永代利用料を生きているうちに払っておこうと思って900万円くらい払ったんだよね」

(中略)

残りの貯蓄は、その医療費と生活費にすべて消えたそうだ。しかし、62歳からのたった7年間で、3000万円もの現金がなくなるものだろうか。

この事例では3000万円もの貯蓄が7年間でなくなってしまったと書かれています。

 

墓石やその他の費用として900万円支払うのもどうなのかと思いますが、残りの2000万円も2度の心臓の手術で使ってしまったと書かれています。

 

このように、健康の面で日頃からの意識や、本当に必要なことにお金を使えるような知識も必要かもしれません。

 

これらの事例のように、多額の医療費を払うために貯金を切り崩さざるをえないというのが多いパターンのようです。

長女のうつ病の事例

もうひとつは次のような例です。

p.55

「長女が中学校のときのいじめが原因で、不登校になってしまってね。そのあと、一生懸命に生活や勉強をサポートして、短大を卒業させたけど、今もうつ病と戦っている。うつ病は想定外だったよ・・・」

 

結局、長女は短大卒業から今まで30年近く病気で一度も働けず、夫妻がずっと養育費や生活費を出してきたという。

(中略)

自分たちの生活費に加えて、娘の看病にお金がかかる。だから二人の老後は非常に厳しい。・・・

上記の例では娘がうつ病のため働くことができないとありますが、現在の日本ではうつ病の患者が増加の一途を辿っています。

 

その原因は学校以外に会社でも人間関係や仕事が上手くいかずに病気になってしまう例が多いです。

 

そのため現実問題として、病気になった子どもの生活費や医療費のために、親の貯蓄や少ない年金収入で工面せざるをえずに、貯蓄がなくなっていくパターンが多いというのは確かにありえそうです。

 

本書では、貯蓄が「ない」パターンをいろいろと取り上げていますが、上記の例が多いようです。

高齢者の価値観と生活能力という点

十分な貯蓄が「ない」というのは、十分な貯蓄は最初はあったけど様々な事情によりなくなってしまうということです。

 

それは本人の健康の問題であったり、親族の面倒を見てあげなければならなかったりするパターンが多いということを書きました。

 

本書ではいろいろな対応策が書かれていますが、他にも「生活能力」について指摘しています。

 

今まで取り上げた例もそうなのですが、数ある問題の中のひとつとして、本書でも取り上げられていますが現在の高齢者の「価値観」があります。

団塊の世代の人たちの価値観

どういうことかというと、特に団塊の世代の方々は高度経済成長の時代を経験しており、消費することが善とされてきました。

 

そのため、なかなか節約が出来ず、家や車の維持費、それ以外に食費や水道光熱費などの基本的な生活費の節約がなかなかできない人もいると書かれています。

 

別の視点で見ると、節制することが健康にも貯蓄にも繋がり、穏やかな老後の生活を送ることができるのではないでしょうか。

 

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