人工知能は現在、誤差逆伝播法という引き算の思考まで辿りついている

最近は人工知能の発達具合や人工知能が人間のどんな仕事を奪っていくのかということが、よくニュースなどで取り上げられます。

 

コンピュータの進歩の早さはムーアの法則で進んでいるとか指数関数的に進歩していくといった言葉がありますが、では具体的にどこまで進んでいるのか、今はどういったことができるのでしょうか。

 

どうやら現在は「誤差逆伝播法」という「引き算の思考」まで辿りついているようです。

 

このブログでは以下のような過去記事を書いています。

ここではNHK出版新書から出された羽生善治さんの『人工知能の核心』において、アマゾンのレビューについて思ったことを書いた記事です。

 

この記事ではまだ実際に本書を読んでいたわけではなかったのですが、今回は読む機会がありました。一度一通り読んでみまして気づいたことを書いていってみます。

はじめに

羽生善治さんの『人工知能の核心』という本は過去記事でも書いたように、あらすじやアマゾンのレビューの内容から非常に興味を持っていました。

 

実際読んでみて多くの新しい視点を持てるようになったのですが、その中でも誤差逆伝播法という言葉が印象に残りました。

 

この言葉を説明する前に、人工知能やコンピュータがなぜここまで性能を高められたのかという点について簡単に確認していってみます。

人工知能がここまで発展した3つの要因

人工知能の現在までの発展には大きく3つの要因があると言われています。本書ではそれを「ビッグデータ」「ハードウェア」「ディープラーニング」にあるとしています。ではなぜこれらなのか。

「ビッグデータ」

大量の本が表示されたモニター

人工知能は学習するデータがたくさんあればあるほど強く優秀になっていきます。1997年にIBMが開発したチェスのプログラムであるディープ・ブルーが当時の世界チャンピオン、ロシアのガルリ・カスパロフを破った試合がありました。

 

この時にディープ・ブルーは100万局以上のデータベースが搭載されていて、1秒間に2億局面を思考できたそうです。これが人工知能が発展した3つの要因の中の「ビッグデータ」の事例です。

「ハードウェア」

2つ目の要因はハードウェアです。このブログでは以下のような過去記事を書いています。

コンピュータの発展の歴史というのは、ムーアの法則とか指数関数的に増加するという言葉があるように、最初の頃はたいしたことはありませんでした。

 

ですが、時間が経つにつれて、特に最近ではコンピュータの成長の伸びが爆発的なものになってきています。

 

それが私たちの周りの環境において、例えばソフトバンクのペッパーやセルフレジ、その他の今までにない機械による生活環境の変化など、目に見える程の形になってきています。

 

これ以外にも、特に最近の事例では、2016年3月にGoogleが開発した囲碁AIの「アルファ碁(AlphaGo)」が世界トップ棋士である韓国のイ・セドル氏に勝利を収めました。

 

この背景には、アルファ碁を学習させる際に膨大なデータを処理するソフトウェアとそれを支える強力なハードウェアやノウハウがあったようです。

「ディープラーニング」

人工知能がここまで発展した3つの要因の中の3つ目がソフトの部分である、「ディープラーニング/深層学習」です。これは最近注目されてきた技術です。

 

これは、ニューラルネットワークという人間の脳が学習する仕組みを真似した手法です。人間の神経細胞(ニューロン)は電気信号で互いに情報伝達を行っていて、その接合部が「シナプス」と言われています。

 

人間のニューロンが学習によってシナプスの結合強度を変化させるように、人工知能にも学習する過程で重みづけを変化させ、最適な値を出力するように調整することで、精度を高めていきます。

 

このシナプス結合によって知性を表現するという発想を、数学的にモデル化したのがニューラルネットワークです。

 

ディープラーニングという手法についてそれほど専門的に説明することはできないのですが、この手法によって人工知能がある一定の物事に対して「特徴量」、つまり何らかの意味ある共通点を見いだせるようになったと言われています。

 

ディープラーニングは、膨大なデータをもとに特徴量を見つけ出します。人間が特徴量を設計するのではなく、コンピュータが自ら高次の特徴量を獲得して、例えば最近の事例では猫の画像を認識できるようになったり、それ以外にも映像、音声の高度な認識ができるようになっていきました。

 

ここからがこの記事の本題ですが、このディープラーニングの過程に「誤差逆伝播法」が含まれている、ということです。この手法が人工知能の発展において非常に大きな可能性があるようです。

誤差逆伝播法

誤差逆伝播法とはどのようなものなのでしょうか。『人工知能の核心』の中で羽生さんが次のように書いています。

p.23

例えば一個一個の神経細胞が人間だとして、彼らが皆で「伝言ゲーム」をしているとします。そのとき、「猫とはこんな生き物だ」という情報が最初の人に伝えられて、神経細胞の一人一人が周囲の神経細胞たちにその情報を伝言していきます。

(中略)

でも、50人で伝言ゲームをしたらどうでしょうか。最初の人から何度も伝言されているうちに、いつの間にか、「明日、日本橋のデパートで買い物をします」のような、まったく違う話になってしまう可能性もあるかもしれません。

 

なぜそうなるのかと言えば、途中でトンチンカンな情報を伝える信頼できない人が出てきてしまうからです。

上記のような例え話において、その解決方法はちゃんと情報を伝えてくれない信頼できない人に「外れてもらう」、そのことによって正確に情報を伝えられるようにすること、と書かれています。

 

もう少し書き加えると、大量にあるデータの中から、「これは利用できそう」「これは明らかに利用できない」といったように、非常に早いスピードでさらに高い精度で「当たり」をつけられる手法であり、これが誤差逆伝播法と言われるものです。

 

今までは、いかに多くのデータを集めるか、いかに多くのデータが処理できるかという「足し算の思考」だったわけですが、今後は、その中でいかに無駄なものを省いて最適なものを見つけることができるかという「引き算の思考」が重要になってくるようです。

アメリカのとある警察官の事例

本書では誤差逆伝播法を使った効果の事例として、本書ではアメリカのとある街の警察官について触れており、次のように書かれています。

p.25

その街はとても治安が悪く、警察官はいつも頭を悩ませていたそうです。そこで実験的に人工知能に「今日はどこへパトロールに行くべきか」を決めてもらったといいます。

 

すると人工知能は、勤務暦20年のベテラン警察官なら、「この時間、こんな場所は安全に決まっているだろう」という地域をパトロールさせる指示を繰り返したのでした。

 

実際に指示通りパトロールしたところ、その結果は驚くべきものでした。その街の犯罪率は、劇的に低下したのです。

 

実はこの人口知能は膨大なデータから、「今日ここで凶悪犯罪を犯した人物が釈放されて街にいる」など様々な可能性や情報を計算して、パトロールを行うべき場所を最適化していたのでした。

この事例は、膨大なデータから無駄な部分を省いて、最も適したデータを抽出し、それを活用したものの成功事例と言えるでしょう。

 

この事例以外にも、この手法は化学の分野でも使えるのではないでしょうか。例えばA、B、C、D、Eという物質があって、その成分を元に今現在求める物質の性能を実現するためには、どのようなパターンが最適なのか、といった考え方です。

 

他にも現実にあった昨今の事例では、専門医にも発見できなかった癌を、画像から精緻に見分けたものもあるようです。

まとめ

ここまでは、自分が『人工知能の核心』という本を読んで、「誤差逆伝播法」といった印象に残った部分を書いてきました。

 

「足し算」とか「引き算」の思考、ディープラーニングによって猫の画像を認識できるようになるとか、まるでどんどん人間に近づいていっている感じがしますよね。

 

このような人工知能の発達具合から本書の著者である羽生さんは次のように述べています。

p.29

人工知能は、今やかなりの進歩を遂げている。

 

そう私が考えた理由はもう一つあります。人間の思考の強みを、人工知能が取り入れだしているように思えてならないのです。

最近のニュースや自分がここまで経験してきたことや読んできた本から考えるに、確かに人工知能というのは人間の思考に近づいてきていると言えます。

 

逆の視点から考えると、むしろ「人間の思考回路」に近づけていかないとモノや機械が「知性」というものを持つのは難しいのでは、とも思うのです。

 

人類がここまで知性を持てるようになったのも、人類という生物が誕生してから何百万年もの間に自然環境の変化とか自然淘汰を乗り越えてきたわけで、

 

その中で人類の体内や脳内でつくりあげられてきたものというのも、何らかの合理性があると思うんです。

 

ですから、そのような厳しい自然環境の変化を生き抜いてきた人類の思考回路を模したものをつくるというのは、非上に理に適っているのではないでしょうか。

 

この誤差逆伝播法という手法が、今後の私たちの生活にどのように役立っていくのか期待していきたいところです。

コメント