クラウドソーシングの企業ごとの捉え方
p.22
- クラウドソーシングの動きは取るに足りないものと無視する
- クラウドソーシングの動きを危険なものとみなし、拒否する
- クラウドソーシングを積極的に活用してみようと考える
『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命 』から引用
上の言葉はどういう意味かというと、上記の本の著者が日本の企業関係者に聞いた時のリアクションのパターンだそうです。
3番目のパターンは、ほとんどがベンチャー企業の方の言葉で今後積極的に利用を考えているのが伺えます。今回はクラウドソーシングについて、どういった企業が効果的に利用できるのか、今までにない新たな問題解決方法について少し掘り下げて書いてみようかと思います。
新しい人材調達方法
今回は以下の過去記事の続きです。
クラウドソーシングは企業にとっては新しい人材調達方法になりうると言えます。ではどのような企業が効果的に使うことができるのでしょうか?それは『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命 』に海外市場の現状について次のように書かれています。
p.16
「この成長を牽引しているのが、スタートアップ(創業間もない企業や始めたばかりの事業のこと)と中小企業である。主要15サイトの売上のうち、年商が1億ドル以下の企業が占める割合は60%を超えている。
これらの企業は、特にフリーランスの調達やソフトウェアの開発業務の委託などでクラウドソーシングを利用している。」
引用ここまで
現在、というか以前から中小企業は人手が足りていないと言われていました。正社員を雇いたいと思っていても、皆大企業に流れていってしまう、人材紹介会社にお願いするにも何百万もする紹介料はなかなか払えないし、雇えたとしてもこちらの期待していた程のレベルではなかった。
派遣会社にお願いしてもこれまた手数料が高いし、期待通りのレベルではなかった、といったことでなかなか「人」という面で課題を解決することができない中小企業が多いかと思われます。そのような企業が今後の戦略のひとつとして「クラウドソーシング」という選択肢を考えてもいいかもしれません。
千葉県成田市の企業の事例
以下に中小企業白書でクラウドソーシングを利用して経営課題を解決した企業の中の1つを紹介してみます。
第5章 新しい潮流―課題克服の新しい可能性―
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/10Hakusyo_part3_chap5_web.pdf
p.389
クラウドソーシングを活用して経営課題を解決した企業
3-5-3.事 例 株式会社ソフトプランナー
「千葉県成田市の株式会社ソフトプランナー(従業員 8 名、資本金 2,000 万円)は、自動車整備システムや車両販売管理システムの制作・販売を行う企業である。小規模な自動車整備企業や中古車販売企業が主要な顧客となっている。
同社は以前、システム導入に際して課題を抱えていた。新規顧客が他社システムから同社システムに乗り換える際、社内のデータを移行する必要があるが、そのデータ移行を社内では技術的に実施できず、結果としてキャンセルに至ってしまうケースが全体の 5~10%程度あった。
これを改善したのがクラウドソーシングだった。2012年10月に、クラウドソーシングサイトに登録し、自社内ではできないデータ移行の業務を発注した。
これにより、技術的な理由でキャンセルに至ることを避けられた。この発注がうまくいったことをきっかけに、同社はホームページの機能追加や、会社ロゴや名刺の作成、チラシやポスターのデザイン等についてもクラウドソーシングで発注するようになった。」
(全文は上記URLを参照してください)
引用ここまで
実際にクラウドソーシングを利用して経営課題を解決した企業の実例を見てみることで
「あぁ、こういう風に使うんだな」
「クラウドソーシングってちゃんと使えるんだな」
と思えます。自分も最初は半信半疑でした。しかし実際に利用している企業の実例を見ることでいろいろとイメージしやすくなると思います。
「自己資源が乏しい」ということが今後強みになるかもしれません。大企業であれば非常に多くの人間を正社員として雇っています。しかしこれからは、ますます競争が激しくなる社会ではそれが弱みになるかもしれません。
大企業には「余剰人員」を大量に抱えているところもあると言われています。冒頭部分に書いたような考え方はまさに今の日本を表していると思います。
そのような中で中小企業がクラウドソーシングを上手く利用することができれば、スピードや価格面で競争優位性を持てるようになるかもしれません。
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