「あぁ!なんとか毎日の満員電車に乗らずに会社に行かないで嫌な上司とも空間を共有せずに自宅でできる仕事がないものか!」
と、多くの人が考えたことがあるのではないでしょうか?かくいう自分も正社員、派遣社員として今日まで働いてきましたが、「なんとか他に選択肢がないものだろうか」と日々考えていました。
なぜわざわざ毎月高いお金を払って定期券を購入し、辛い想いをして満員電車に乗らなければいけないのでしょうか?
なぜ憂鬱な気持ちになってまで職場まで足を運ばなければならないのでしょうか?大雪で電車が全て止まって、会社に行きたくても行けなくなって休まざるを得ない状況にならないだろうか、と考えたことは一度や二度ではありません。
現在は2017年であり、数年前、数十年前と比べればIT技術はかなりの進歩を遂げているはずです。それなのになぜいまだに以前と同じようなライフスタイルを続けなければいけないのでしょうか?
他に選択肢はないのでしょうか・・・。いえ、どうやら政府も昨今の社会情勢から「テレワーク」というもの促進をせざるを得ないと考えているようです。
今回はこのテレワークというものについて、最近読んだ本やニュースから気づいたことを書いていってみます。
テレワークとは
今回の記事を書くきっかけとなったのは『テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016』という本を読んでみたからです。
以前から、何か別の選択肢はないものだろうかといろいろと調べてはいました。そこで最近辿りついたのが「テレワーク」という言葉であり、このテレワークについて良い本はないものだろうかと調べて見つけたのが本書です。
本書にはテレワークの意味について以下のように書かれています。
p.13
情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方
つまり、本拠地を離れて、ICTを使って仕事をすることです。テレワークの形態には、働く場所の区分によって、自宅利用型テレワーク、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務などがあります。
また、就業形態による区分では、雇用型テレワークと自営型テレワークがあります。自宅利用型テレワークにおいて、雇用型の場合は在宅勤務と呼び、自営型の場合は在宅ワークと呼びます。
ふむ、なるほど。一度は読んだのに、自分で今回の記事のように入力することで改めて気づいたことがありました。
テレワークには大きく次の2つに分けられると言われています。
- 雇用型
- 自営型
最近、会社に行かずに働ける求人はないか探していたのですが、その時使っていたキーワードが「在宅勤務」でした。
例えば正社員の人が上司などに「在宅勤務で働かせてくれませんか?」というのは正しいのでしょうが、自分のように正社員ではない外部の人間が「在宅勤務」という言葉を使っても、そういった求人があるわけがないですね。「雇用型」ですから。
反省しました。ちゃんとひとつひとつの言葉の意味を理解しないといけないですね。外部の人間がインターネット上で会社に行かないで働ける求人を探す場合は、在宅勤務「以外」の言葉を使って調べないといけないということです。
話しを戻しますが、テレワークという働き方は働く場所の区分によって3つに分けられると。そして就業形態の区分によって2つに分けられるのですね。
テレワークというと、なんとなくSOHOとか在宅勤務という言葉の連想から「自宅」で仕事をするもの、といったイメージがありましたが、働く場所というのは別に自宅だけに限られているわけではないということです。
また、同じような連想から正社員ではないフリーランスとか外部の人間の働き方のイメージがありましたが、必ずしもそうではなく
「雇用型テレワーク」という言葉もあるように、会社に「正社員」として勤務している人でも在宅で働ける働き方があるということですね。
政府や企業もテレワークや働き方改革を推進し始めている
昨今のニュースや資料では、以下のように政府や企業もテレワークや新しい働き方について行動を起こし始めています。
- 平成25年6月には、「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20130614/siryou1.pdf
社員の「働き方」を大きく変える取り組みを始める企業が相次いでいる。カルビーが4月から、これまで週2日までと決めていた自宅など社外で勤務する「テレワーク」の上限日数を撤廃する。斬新なオフィスなどで知られるヤフーは4月から「週休3日制」を導入すると報じられた。
(中略)
企業が「働き方改革」に動き出した背景には、急速に進む人手不足がある。働く環境が悪い場合、より条件の良いライバル企業などに社員が転職してしまう例が増えているが、そうなると穴埋めの人材を探すのは難しく、その分残った社員に負担がかかることになる。つまり、働く環境が一段と悪化する悪循環に陥ってしまうのだ。
なぜ最近になってこのような動きが目立つようになったのでしょうか。それは引用したニュースにも書かれていますし、『テレワークで働き方が変わる!テレワーク白書2016』にも書かれているのですが、「人手不足」という問題があります。
昨今の日本の少子高齢化問題から、日本の人口構造が今まであればピラミッド型だったのが、「逆ピラミッド型」に近づいてきました。
そして今後も出生数が大きく増加する見込みがなく、そういった状況下で新しい働き方というものが議論されてきました。
そのような労働力不足を補うために、女性の社会進出はもちろんのこと、体が不自由であったり、病気であったり、他にもいろいろな事情があって会社に行って働く事が出来ない人にも働けるようにということから、このテレワークという働き方を推進しようという動きがあるようです。
他にも理由があり、日本の「労働生産性」という問題があります。日本は2014年にOECD加盟国34か国中、労働生産性および時間当たり労働生産性が「21位」と低い結果となっています。
以前から長時間労働の問題もありましたが、こちらも主要7か国では最低の結果となっています。テレワークの推進の背景には、この「労働生産性」を高めるという狙いもあるのです。
テレワークはオフィスの稼働率を上げる効果がある
ここまで
- 『テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016』
からの内容を取り上げてきましたが、テレワークに関する本で
- 『在宅勤務が会社を救う:社員が元気に働く企業の新戦略 』
も読んでみました。
『テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016』が経営者側、労働者側に立った視点での書かれ方をしているのですが、『在宅勤務が会社を救う:社員が元気に働く企業の新戦略 』は主に経営者側の視点に立った書かれ方をしています。
その経営者側の視点で「なるほど」と思った部分があり、その部分を引用してみます。
p.41
会社は、社員の机を用意するのは当たり前と思っていると、せっかくの「コスト削減」のチャンスを逃すことになります。
昼間、営業で外回りに出る社員の机は空いていませんか?
「営業が、外に出ないでどうする!?」と檄を飛ばしつつ、営業活動をしている昼の間でも、その社員の机まわりの空間には、賃料を払っているのです。最近は、営業部門に「フリーアドレス制」を導入する企業が増えています。
「フリーアドレス制」とは、オフィスでの社員の席を固定せず、社員は空いている席を自由に使うという制度です。外回りが多い部門であれば、人数分の机は不要、というわけです。
新しいオフィスのカタチとして、大きな企業が次々と採用しています。
引用した部分は、在宅勤務ができるようになる効果のほんの一例であり、他にも在宅勤務を導入することにより様々な効果が得られる事例が紹介されています。
今回引用した在宅勤務の効果については、思わず膝を叩いてしまいました。
「あぁ、だから席を固定しない企業があるんだな」と。
今まで就職活動をしてきた中で、席を固定しない企業というのもありました。その時の自分の考えとしては、ただ単に「IT系の企業だから」「なんとなく先進的だから」といったイメージしかありませんでした。
ですが、本書を読むことで在宅勤務や「席を固定しない」という意味を理解できるようになりました。確かに営業の人っていつもオフィスにはいないですもんね。いても時々ですし。別に営業の人の机に限らず、別の部署の机も結構空いてる時ってあります。
「稼働率」という視点で見ると、確かに「低い」ですよね。だってかなりの時間「使われていない」わけですから。
それなら、在宅勤務を導入したり、席を固定せずフリーアドレス制を導入した方が、わざわざ全員分の席を用意せずに済みます。そうなれば、毎月の高い家賃を払わないで、もっと狭いスペースを有効活用して低い家賃で済ますことができます。
おもわず「なるほどなぁ」と思いました。今まで
- オフィスの「稼働率」
という視点はありませんでした。思わず「目から鱗が落ちた」思いです。
つまり、テレワークの導入はオフィスの稼働率を上げる効果がある、ということです。通勤交通費という視点でも効果があります。これは何となくイメージはしやすいと思います。
現代の社会は、情報に関するインフラやシステムが以前よりもかなり整備されて、クラウドソーシングという言葉も出てきたように、外部の人間に仕事を依頼できる機会が生まれてきました。そうなってくると、例えばわざわざ定期的な交通費まで払って社員にオフィスまで来て貰う必要が少なくなってきます。
またそういった機会が生まれてくると、極端な話、家賃を払ってまでオフィスを借りる必要がなくなってくるのです。広いスペースのオフィスからそれほど広くないスペースのオフィスを借りるのではなく、もっと進めて「全く借りない」という方法も考えられるようになってくるわけです。
家賃を払わないで経営ができるようになったら、これは経営面で大きなプラスです。家賃は非常に大きな負担なので、これを回収するために外食産業などの店舗では深夜まで営業させるのです。
つまり今後は経営戦略上、会社間との競争上、社員をオフィスに集めて業務を行う必要がなくなってくる、もしくはそのようなやり方では他社との競争上、生き残るのが難しくなっていくのです。
テレワークにおける現実の求人や働き方、職種ごとの問題点について
自分は今日まで、「経理」という職種の仕事に携わってきました。経理というと、パソコンを使って進める仕事ができるので、在宅勤務やテレワークとの親和性が高いかのようなイメージがあります。
ですが、実際に派遣会社の求人内容や、クラウドワークス、ランサーズなどのクラウドソーシングでできる仕事を見てみても、自宅でできる仕事というのは、非常に少ないのです。
自分が見ている所が悪かったり、見当はずれの所を見ているという可能性もあるかもしれませんが、なぜそういった仕事が少ないのか。それは経理という仕事柄、「会社の経営的な数値」を扱うからだと思われます。例えば、会社ではなく、外部の自宅で働こうとする人間に仕事を依頼する場合、
その会社の日々の取引の金額とか、どの取引先とどういった取引をしているのか、売上、費用はどれくらいか、等々会社にとって重要な情報を晒すことになります。
経理で末端の仕事といっても、非常に重要な情報だったりするので、そういった情報面やセキュリティ面を考えた場合、経理という仕事を外部に出すというのは難しいのではないか、そのため在宅でできる仕事が非常に少ないのでしょう。
例えば、企業の正社員としての経理であれば、会社にとっては「内部の人間」、つまり雇用型テレワークという認識で仕事をさせやすい、という考えもあるかもしれませんが、
自分が調べた範囲では、派遣会社の求人やクラウドワークスなどの求人を見てみても非常に少ないというのが現状です。
まとめ
テレワークの導入には様々なメリットがあります。
国レベルの視点から見ると、今後の少子高齢化、人口減少問題から、
- 今まで労働市場に参加できなかった人も参加できるようになる
- 労働力不足を補うことができる
- さらに外国との競争において労働生産性を高める
といったメリットが考えられます。
企業レベルの視点から見ると、テレワークを導入することによって、
- オフィスの稼働率が上がる
- 優秀な人材の離職を防ぐことが出来る
- それによって他社との競争を優位に進めることが出来る
といったメリットです。
労働者の視点から見ると、例えば自分の場合、
- 毎日満員電車の苦痛を感じなくてもよくなる
- 嫌な上司とも顔を合わせなくて済む
- 時間的にもある程度余裕を持てるようになる
- 以上のことから今までに比べれば快適に過ごせるようになる
といったメリットです。
しかし、メリットだけではなくデメリットもあります。例えば
- まだまだテレワークの普及や認知には道半ばである
- そのため環境が整っているとは言えず、環境整備にも時間がかかりそうである
という点です。今後の動向に注目していきたいと思います。
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