今回の記事を書くまでに堺屋太一『組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか』についてここまで以下の3つの記事を書いてきました。
- 組織の盛衰における共同体組織(ゲマインシャフト)と機能体組織(ゲゼルシャフト)について – 知識の倉庫の整理
- 豊臣秀吉が朝鮮出兵を行った理由は組織面から機能体組織を進めすぎたため – 知識の倉庫の整理
- 旧日本帝国陸海軍がアメリカに負けた理由は機能体組織が共同体化したからということについて – 知識の倉庫の整理
そして組織構造というのものには「コンティンジェンシー理論」というものがあります。この言葉は辞書的に書くと
「組織構造に普遍的な唯一解は存在せず、取り巻く環境に応じて決定されるという考え方。組織構造が環境に適応しているほど当該組織の有効性が高まるとされている」となります。
その時々に適した組織構造が有効であるということですね。
今日まで『組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか』を読んで、このブログでもいくつか記事を書いてきましたが、ただ単に理論だけを勉強するだけではやはりダメだなと感じました。
というのも中小企業診断士の試験にこの「組織」という項目があるのですが、今までは実際にあった具体的な事例について書かれた組織についての本は読んできませんでした。
というのは、堺屋太一さんも書かれていましたが、この「組織」というものは学問体系がまだしっかりとは確立していないようでして、自分もそういった本があるとは考えてはいませんでした。
しかし『組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか』を読むことで、中小企業診断士の試験内容になぜ「組織の重要性」が論じられているのかというのがなんとなくわかってきました。
今回はそのことについて思ったことを書いていってみます。
コンティンジェンシー理論と共同体組織・機能対組織について
コンティンジェンシー理論とは「組織構造に普遍的な唯一解は存在せず、取り巻く環境に応じて決定されるという考え方。」とされています。
そして『組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか』では、組織には大きく分けると
- 機能体組織
- 共同体組織
が存在すると書きました。
そして『中小企業診断士 最速合格のための スピードテキスト (1) 企業経営理論2012年度』から次の言葉を引用してみます。
p.141
1 バーンズ&ストーカー
バーンズ&ストーカーは、組織構造を機械的システム(いわゆるピラミッド型官僚制組織)と有機的システム(水平的に協同関係が発展した柔軟な組織構造)に分け、前者は安定的環境条件に適し、後者は不安定な環境条件に適するとした。
2 ウッドワード
ウッドワードは、実証研究によって生産技術と組織構造との間の関連性を見いだした。すなわち、生産技術(システム)を大量生産、個別生産、装置生産に分類し、大量生産には機械的組織が、個別生産や装置生産には有機的組織が適合することを示し、技術が組織を規定するとした。
つまりは
- 緊急時、動乱期には機能体組織や有機的システムが有効
- 平時など周りの環境変化が小さい時には共同体組織、機械的システムが有効
ではないかと思ったわけです。ですが、この組織構造の変化をどうやってスムーズに行うかが課題になってくるなと思いました。
というのも人間というのは基本的に「現状維持」を好む生き物です。組織を作った最初の時期の機能体組織や有機的システムというのは、ここまでの過去記事に書いたように徐々に共同体化していってしまう傾向があるので、
居心地が良くなった古参の人間が多く在籍している共同体組織を変化させようとするの並大抵ではなく難しいと思われます。
ここまでの過去記事では、戦国時代に機能体組織を進めすぎた豊臣秀吉の事例を教訓に徳川家康は共同体組織として約260年続いた江戸幕府をつくりました。
明治維新後は、機能体組織としての旧日本帝国陸海軍をつくりましたが、徐々に共同体化していき、太平洋戦争という有事の環境に適合しなくなってしまいました。
そういった周りの環境変化の時にどのように組織を変えていけばいいのでしょうか。状況ごとに必要な組織形態というのはなんとなくは分かってきたのですが、肝心の移行方法が診断士のテキストでは書かれていないようですね。
自分の中では今後はこの「どうすれば組織を変化させることができのか」というのが今後の勉強の中のひとつの課題になるなと思いました。
まとめ
診断士の試験の勉強をしていた時に、過去問やテキストの解説によく「なぜ」を追求しないといけないといったことが書かれていました。
それがなんとなくわかってきました。理論的な言葉だけを勉強するのではなく、その言葉や知識の背景、なぜそういった理論や言葉が存在するのかについても理解しておかないといけないなと感じました。
「火の無い所に煙は立たない」という言葉があるように、その理論や言葉は経営にただ良いから書かれているわけではなく、その理論や言葉が生まれた背景には生まれたなりの理由が存在するということです。
本書を読んで思ったのは、やはりある程度の組織を運営しようと考えているのであれば、ただ感覚的にやっていては、その組織の維持・発展というのは難しいのではないかなと感じました。
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