前々回、前回は以下のような過去記事を書いてきました。ここまでは、自分が経験してきた会社の中で感じた「大企業の弊害」みたいなものを書いてきました。
前々回
前回
大企業や上場企業にまでなるということは、その規模になるまでにそれ相応の時間が必要なわけです。
特に歴史があればあるほど、その組織を維持するためには共通のルールが必要になっていき、どうしても硬直化していく傾向にあります。
自分が大学生の頃にここまで書いたようなことを知っていれば絶対に新卒で入ったような大企業は避けていたはずです。
そこで今回は、自分がこれまで経験してきた中で「仮に就職活動するのであれば、どういった企業がいいのか」という現時点での自分なりの基準を書いていってみたいと思います。
今の時代の大企業の状況
多くの人のイメージでは、やはり「大企業」を希望する人が多いでしょう。それは大企業故に
- 安定していそうだから
- 福利厚生が手厚いから
- 社員への教育システムがしっかりしているから
といった理由が多いのではないでしょうか。
かくいう自分もまさに新卒の時はそのような考えがありました。ですが、冒頭部分での過去記事でも書いたように、そういったものはあまり意味がないのです。
大企業に対する「安定していそうだから」「福利厚生が手厚いから」「社員への教育システムがしっかりしているから」というイメージや利益を享受するためには「何十年も長く働いた場合」が前提になっています。
「大企業に入れば10年、20年働けるのは当たり前でしょ?」と考えている方がいらっしゃったら、少し頭を冷やした方がいいかもしれません。
日本経済が右肩上がりだった何十年も前のことであれば、まだ現実味があったかもしれません。今の時代は東芝やシャープに代表されるように、大企業といっても倒産する可能性を否定できなくなりました。
倒産はしなくても、定期的なリストラがある企業も存在します。以下の過去記事でも書いたのですが、最近までどれだけリストラをしてきたか、「従業員を減らした500社ランキング」というものを引用したのが以下の過去記事です。
仮に倒産の危機に陥らなくても、これだけの大企業がこれだけのリストラをしてきているわけです。
今の時代の大企業は経営的な面での安全が保証されていないのは明らかですが、組織面での問題もあります。
これは冒頭部分で引用した過去記事でも書きました。長い歴史がある大企業ほど、理不尽でおかしなルールや価値観がまかり通っています。
別にそれが問題なのではありません。明らかに理不尽でおかしなルールや価値観が「当たり前」のものとして「改善されない」ことに大企業の問題があると自分は感じています。
特に今の時代は、工業社会から情報社会、知識社会への過渡期であり、新たな時代や環境に適応するためには、新たな価値観やルールを受け入れなければなりません。
日本には「郷に入っては郷に従え」という言葉もあります。その意味は、その土地地域、集団に入ったら、自分の価値観と異なっていても、その土地(集団)のルールに合った行動をとった方が良い、といったものです。
大企業の社員というのは、新しく入ってきた人が自分たちのルールに従うべきだと考えています。その通りです。
「新しい時代に入ったのなら新しいルールに従う」というのは当然です。ここで問題なのは「大企業の社員が新しい時代のルールに従わなければいけない」ということに気づいておらず、未だに新しく入ってくる人に「自社のルールに従って当然」と考えている点です。
この何とも言えない逆説的な状況が現在起こっているわけです。「郷に入っては郷に従う」必要があるならば、むしろ高齢者が新しい時代のルールに気づいている若い人たちのルールを受け入れなければ物事が上手くいかない、という時代になっています。
大企業という大きな枠を見ると、「個人」単位では全く対抗できないでしょう。それと同様に「時代」という枠で見れば、大企業という「企業」単位では時代というものには全く対抗できないでしょう。
ですから、今後はもっと高い所からの「俯瞰的な視点」が必要になってくるのではないでしょうか。
就職活動するのであれば若くて新しい企業が良い理由
新しく企業が創立される時というのは、創業者の熱い想いの下に少数の賛同者が集まり事業が始まります。そのような企業というのは、規模が小さく財務構造的に不安定です。
そのため、一人ひとりの給料も高くはないでしょう。福利厚生ももちろんなく、教育システムや社内規程、その他様々なルールはほとんど存在しません。
そういった後ろ盾が何もない企業に集まる人、もしくは集まれる人というのは、やはり
- 志が高く
- 能力的に優れている人
が多い気がします。
自分もいくつか会社を見てきて良かったと感じた所は、ここまで書いてきたような「新しい」企業や「若い」企業です。これはITとかの先端的な業種や外食産業などの激務とか負イメージがある所に限定されません。
組織面でのデメリットとメリット
業種に関係なく、創立間もない、新しく若い企業にいる人間というのは皆良い人だなと感じました。これは自分が今まで経験してきた企業、ここまで書いてきたような企業と比べると対照的でした。
よくよく考えればそれも当たり前だなと思うようになりました。というのも、設立されてまだそれほど時間が経っていない企業というのは、大企業にありがちなおかしく理不尽なルールや慣習は少ないです。
また、そこに在籍する社員の年齢層も若い傾向にあります。ですから、20代、30代の人間がそこに入れば、周りの人間も同じ年齢層であり、価値観も似通ったものになります。
中高年層にありがちなのは、下の人間に対しては厳しく罵詈雑言を浴びせながら教えることが美徳みたいな考えです。教える方はいいかもしれませんが、教えられる方はたまったものではありません。時には手も足も出てくるほどです。
ですが、少なくとも自分が見てきた新しい企業ではそのような雰囲気の所はありませんでした。
「新しく一から組織をつくる」というのは、一見すると大変そうに感じます。ですが、昔の時代では美徳だったかもしれない現代においてはおかしなルールを継承していないために逆にそれが利点でもあります。
上の世代がほとんど居らずおかしな抵抗に合わないため、現代のルールや慣習に合った組織をつくりやすいと考えられます。
若くて新しい企業は「若い人」が中心なので良くも悪くもしがらみがなく、大企業のようなおかしな文化や基準が少ない傾向にあります。何でも吸収できる感じで、外部から来た人間を無条件に排除することもあまり見受けられません。
自分としては、そういった職場は「自由」で「活気」があり、非常に働きやすいと感じました。
経営面でのデメリットとメリット
世の中には歴史があって大企業で上場していて安定している企業があります。一方で、全く歴史がなく最近できたばかりで財務構造的にも不安定、いつ潰れるかもわからない中小企業もあるわけです。
この情報だけ見たら、多くの人は就職活動するときに前者を選ぶでしょう。でも自分の感覚ではおすすめできません。
今は時代が移り変わり、モノを大量につくることにメリットがあった工業社会から、より高度な知識やサービスを顧客に提供することが大きな利益を得られる情報社会、知識社会へ移行しています。
そのような時代の移り変わりの時に、長い歴史を経て大規模で磐石な組織を構築してしまった企業は今の時代では成長は難しいでしょう。
過去の時代の世界では
- 大規模
- ピラミッド型
- 体育会系的
- 縦社会
のような組織形態や価値観をつくることが適していたかもしれません。
以下の過去記事でも書きましたが、それは「モノ」を大量につくるうえでは適していたのでしょうが、今は多くの人が最低限の生活をするために必要な「モノ」を持てる時代であり、飽和してしまっているとも言えます。
次の時代に必要なのはモノに対して「コト」と言われています。顧客が喜ぶような経験を提供できる「サービス」や顧客の求める「ライフスタイル」を提供することが求められるようになってきていると言われています。
目に見えるモノに対して、目に見えないサービスや知識を提供できるようになることは、価値観や組織形態の根本的な転換が求められます。
「規模の経済」というが言葉ありますが、昔は大量にモノをつくって販売することが大きな利益に繋がったため、大規模な工場を持てるような大企業は有利でしたし、上の人間に従順で反復的な作業を厭わない人間が重宝されました。
しかし今の時代はモノは飽和してしまっており、大規模な工場というのはあまり必要ではありません。ということは必然的に上の人間に従順で反復的な作業を厭わない体育会系的な人間の価値は下がっていく傾向にあります。
それに対して、サービスや高度な知識の提供が求められる知識社会においては、それほど規模の大きい組織は必要ありません。「Google」という企業が典型的な例でしょう。
ITとかインターネットというインフラがあれば、世界中の何十億という人間にグーグルマップやGメールというサービスを提供できます。しかもそれを利用するのは無料でできるのです。
今までであれば何十億、何百億という費用をかけて大きな工場を建てて、何千何万という従業員を雇って毎月給料を支払い、製品をつくって顧客に製品を販売するビジネスモデルが大きな利益を上げられました。
それに対して、今の時代はたった一人か数人のアイデアで製品やサービスを一瞬で何十億の人間に提供できる時代です。そういった時代に一人ひとりに求められるのは次のようなものです。
- 今までにない新しい「アイデア」
- 高度な知識
それらを醸成するために必要な価値観や雰囲気というのは、工業社会で重宝された「上の人間に無条件に従順に従う」とか「反復的な行動」といった閉鎖的で体育会系的で縦社会の世界観ではありません。
今の時代に求められる世界観や価値観は
- 横社会
- 開放的
- 自由
- 新しいアイデア
といったものです。
ですから、今までのような「恐怖」で従業員を縛って、自分たちの下で「無知」のまま奴隷のままにしておき、こき使おうとする企業に未来はないでしょう。
おそらく今後は、下の人間を奴隷のように扱ってきた上の人間は、奴隷のように扱われていくことになるでしょう。
ですから、今後の就職活動を考えるのであれば、特に新卒の方であれば、大企業と比べれば財務的、規模的には見劣りするかもしれませんが、若くて新しい企業が良いのではないかと自分は思います。
将来的には「個人の時代」が来る
ここまでは、今後就職活動するのであれば、大企業よりも若くて新しい企業が良いといったことを書きました。ですが、さらに先を見据えるのであれば、これからは「個人の時代」が来るでしょう。
大企業でもなく、若くて新しい企業でもなく「個人」として働ける必要性が出てくるはずです。
そのための「個人として」生き延びる知識が今後は重要になってくるだろうと思います。そのような時代のルールや価値観というのは、今の時代のルールや価値観とは全く違ったものになっているはずです。
そのような時代に、「郷に入っては郷に従え」ないのであれば、その人は文字通り生きるのが辛い時代になっているでしょう。
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