今回の記事のタイトルは「労働集約産業、資本集約産業から知識集約産業へ━今後個人が生きていくうえで必要なもの」です。
このネタはかなり暖めてきたものの中のひとつです。いつかこのことについて書こうと思っていました。
このブログでは以下のような過去記事を書いてきました。
世の中には一見すると階層とか階級とかないように見えますし、そのような議論をすること自体嫌悪されます。ですが、自分が今まで世の中をじっくり観察してみると、やはりそこには、見えない「階層」のようなものがあると感じます。
日々生きる私たちの空間にあるように見える階層は、どういったことが原因でつくられるのか。今回の記事では「業種」とか「平均年収」というものに焦点をあてています。
上記の過去記事では、そういった「階層」とか業種ごとの平均年収を決めるものは、その企業や人間が持つ「知識や技術がいかに高度なものか」といったことを書きました。
ですが、必ずしもそれだけではないのではないかと思うようになります。
自分が得た知識が「企業だけではなく個人にも応用できないか」という視点でも、今回の記事を書いていってみます。
業種別の平均年収で、なぜここまで格差が出るのか
インターネット上で業種別の平均年収を調べたことがある人というのは結構多いのではないでしょうか。自分の立ち位置はどれくらいなのか、というのはやはり気になるものです。
そのような考えに加えて、自分は以下の過去記事のような考えをずっと持っていました。
特に以下の部分
- 「どうすれば競争を回避できるのか」
- 「どうすれば少ない労力で勝てるようになるのか」
- 「弱者が強者に勝つにはどうすればいいのか」
上記のような考えをずっと持っていたので、業種ごとの平均年収の違いというものに違和感というか不思議さを感じていました。
自分の企業に対するイメージでも、何社もの企業で実際に働いてみた感覚でも、むしろ非常に疲れる仕事をしている所ほど利益率が低く、こんなに楽をしていいのだろうか?と感じる所ほど利益率が高かったりします。
そういった結果を生み出す原因というものは何なのか、ずっと考えていました。
1対1のビジネスか、それとも1対多数のビジネスか
ネット上で「業種別 平均年収」と検索して以下のリンク先にある図を見る方も多いと思います。
皆はどれくらい貰うのか?平均年収(給与)の男女別・業種別の推移グラフ | マネープラン|お金の貯め方はマネーアイデア|生命保険や資産運用の情報
平均年収が一番高い左側は、「電気・ガス・水道」といった社会のインフラを支える企業の平均年収ですね。反対に一番右側の方は、小売とか飲食店やサービス業といった企業の平均年収です。
以前の自分の考えではその企業や人間が持つ「知識や技術」が、その企業の利益率やそこで働くことに対していかに余裕を持てるか、という部分に関わっていると思っていました。
しかしその時の自分の考えが正しいのであれば、引用した図の「学術研究・専門技術」に関する企業が最も平均年収が高くなっていなければおかしくなります。
もしくは現在の最先端の分野である「情報通信業界」の平均年収が一番左側になっていてもおかしくありません。
ですが、現実にはそうはなっていない、そうなっていない原因は何なのか?自分はずっと考えていました。
そのような考えをもちながら、いつものようにインターネットで調べ物をしていたときに次のような言葉を見つけました。
- 「労働集約産業」
- 「資本集約産業」
- 「知識集約産業」
これらの言葉が、まさにその時の自分の疑問を解決してくれる言葉であり、さらに今後個人の時代における必要な知識なのではないかと思いました。
これらの言葉の意味を大まかいうと「1対1のビジネスか、それとも1対多数のビジネスか」ということなのですが、それをもう少し詳しく説明していってみます。
労働集約産業
上記の3つの種類の産業について以下のサイトがわかりやすく書かれているので引用してみます。
労働集約産業・資本集約産業・知識集約産業 – 起業ポルノ
- 労働集約産業
これは多くの場合は機械化が難しい分野で、単純労働力の提供が収益の源泉となっている産業。例えば飲食業・人的なサービス業・運送業などが代表例となる。一人あたりの、資本投下額が小さく、売上に占める労務費の割合が高い。
ふむふむなるほど。インターネット上ではブラック企業とか激務とかいう言葉が多く使われる業界ですね。
自分も以前は飲食業界で働いていたので、この業界の厳しさはよく知っています。この説明だけでは当たり前すぎて、「だから何なのか」と思われるかもしれません。
その説明については次の2つの種類の産業を説明したら書いていきます。
資本集約産業
- 資本集約産業
投下資本を行い、労働力よりも機械や設備の力で生産したりサービス提供をするような産業。メーカーや、大型商業施設などが代表例。一人あたりの、資本投下額が大きく、売上に占める労務費の割合は下がる。
メーカーといえば、例えばトヨタ自動車などが思い浮かびます。自動車を生産するために大規模な資本を使って、広い土地を確保したり大きな工場を建てたりします。
加えて機材なども購入し、人も雇って自動車の部品をつくったり、組み立てたりして最終的な製品である自動車を生産する、というのが一般的なイメージではないでしょうか。
昨今の日本を取り巻く経済環境では、外国との競争や為替の変動、外国と比較した場合日本の高い法人税や土地代、人件費などを避けるために外国に工場を建てる企業も増えてきています。
知識集約産業
- 知識集約産業
知的労働力や、研究開発によって会社としての知識や技術力を高めることが収益の源泉となっている産業。投資ファンド、コンサルティング(ファーム)、ファブレスメーカー、製薬会社が典型例。一人あたりの、資本投下額はさほど大きくはならないが、成功している例では一人あたりの収益力は高くなる。
この産業で働く人たちは研究開発者や経営コンサルタント、公認会計士、税理士といった人たちがイメージできます。もう少し加えると、作家やゲーム開発者なども入ります。
労働集約産業、資本集約産業に比べると1人当り労働生産性が最も高くなるのがこの分野です。というのも作り出す製品が、そこで働く人たちのサービスや知識といったものになるので、大規模な土地や工場を必要としません。
そのため多大な資本を使わずに製品を作り出せるので、非常に収益性が高くなります。
問題点としては、その分野で働けるようになる知識や技術を身につけるためには長い時間を必要とすることでしょう。
いかに少ない労力でいかに多くの人にアプローチできると、その結果どうなるのか
上記3つの産業を比較すると、労働集約産業が1対1でビジネスをする産業です。
資本集約産業は工場や設備を利用して1対多数のビジネスができる産業であり、知識集約産業は一見すると1対1のビジネスしかできないように見えます。
ですが、「インターネット」という技術と知識という「情報」の特性を利用することで1対多数のビジネスが出来る産業です。
この1対1と1対多数という違いが何を生み出すのか。
以前どこかのサイトでビルゲイツのマイクロソフトが作り出したwindowsというOSを例とした話を見たときのことでした。
パソコンのOSをつくるためには、非常に難しくさらに何万、何十万、それ以上のソースコードの作成が必要とされています。加えてそれをつくるための非常に優秀な人材も必要とします。
ここからが本題なのですが、つくったOSはメーカーの工場でつくる自動車や、飲食店で作るラーメンとは違い、費用がほぼ「0」で複製することができるという点です。
例えば私達が普段使っているワードやエクセルのデータなどを思い浮かべていただければと思います。
何か表や文章をつくったりした後、「保存」ボタンを押しますよね。そこからコピーが必要な場合、マウスの右クリックでコピーして、必要なフォルダに貼り付けをすると思います。
その時に何か余分にお金がかかったりすることはありません。ちょっとした手間だけです。
例えば飲食店で作るラーメンなどは、レシピのコピーは簡単かもしれませんが、ある商品をたくさんつくるとなると、エクセルファイルのコピーのように簡単にはいきません。
お客さんから注文が入ったらその度にレシピ通り一から作って一人ずつお客さんに提供しないといけません。
メーカーの工場もそうです。とある製品をつくるための設計図は簡単にコピーできるかもしれませんが、お客さんから注文が入ったら工場や設備があるとはいえ、やはり設計図通り一から作って一人ずつお客さんに提供しないといけません。
物理空間では複製をつくるのに様々な制約がありますが、インターネットのようなサイバースペース、仮想空間であれば、そのような制約がほぼなくなります。
例えば企業が拡大を目指すうえで、飲食店などは「人の数」という面、メーカーなどは「資本」という面で制約を受けることになりますが、
知識集約産業における「知識」という「情報」はそれらの制約がほぼないのです。
この話を見たとき、なぜビルゲイツが何兆円もの資産を持てるようになったのか、現在の日本におけるSEやプログラマーの待遇がなぜ悲惨だと言われるのか、なぜ業種ごとに平均年収にこれほど差があるのか、なぜ日本で格差が拡大していると言われているのか、
ここまで書いたような知識を得ることでなんとなくわかってきました。
自分はこれらの知識を応用することで、個人が企業に依存せずに今後生きていくことはできないか、さらに人類が次のステージに進むことはできないかと日々妄想しています。
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更新日 2019年12月14日 8:51 PM
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非常に参考になりました。有難う御座います。
最も得意とするところは知識集約型産業だとわかって一人で納得していました。
時代が変わり、3つの産業形態の中身は変われど、全体のπはおそらくほとんど変化しないでしょうね。
人の発想が変わらない事、また遠くの大金より近くの小銭(生活費)のほうが重要度が高いですからね。