今回の記事のタイトルは「CRMという技術や概念が出てきた理由は意向情報より行動情報(購買履歴)の方が重要だから」です。
CRMとかマーケティングといった言葉は昨今よく耳にする言葉になってきましたが、「火のない所に煙は立たない」という言葉があるように、何の根拠もなく何かが生まれたりはしないものです。
ですから「CRM」とか「マーケティング」といった言葉が生まれた理由や背景というのは、その言葉を理解する上では大切です。
最近『CRM―顧客はそこにいる (Best solution)』を読み始めて2週目が終わりました。
1周目を読み終えたときは、難しい言葉や言い回しが結構出てきたのでなかなか頭に入ってこなかったのですが、2週目に入るとなんとなく本書の中身がわかってきました。
今回は本書の中の「CRM」について自分なりに理解したことをまとめていきます。
そもそもなぜ「CRM」という技術や概念が生まれたのか
端的にわかりやすく言うと、モノやサービスが「売れなくなって」きた。だから需要を喚起する必要がある、ということが背景にあるようです。
CRMの重要性や今後の必要性については以下の過去記事で触れてきました。
今まではモノやサービスが不足していましたが、徐々に需要が満たされてきます。そうなると、モノやサービスが売れなくなり企業は困ってしまいます。そういった状態を解決するために生まれてきたのが「マーケティング」というものです。
マーケティングはwikipediaでは以下のように書かれています。
マーケティング(英: marketing)とは、企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。
また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。
もう少し噛み砕いていくと「販売を促進する」ということから「需要を喚起する」とも表現できます。
具体的には、顧客のデータから車の買い替え時期を把握してメールで案内を送ったり、誕生日になった人にお祝いのメールを送ったり、という方法があります。
もちろんこれはほんの一部ですが、重要なのは顧客に「直接」接触しているという点です。
近年は以下の過去記事のようにデルのように卸を介さずに、顧客との直接取引のメリットが理解されるようになってきました。そのため企業が消費者と直接繋がろうとする傾向が近年進んでいます。
その理由は「マージンを取られないようにして、安く販売できる」という点もあります。
しかしそれ以上に顧客と「直接」接することができないと、顧客の動向や考えがわからず、メールや電話といった複数のチャネルを通して直接需要を喚起できないからです。
加えて顧客から直接ニーズを聞けないことによって、商品開発も迅速に進めることができないためです。
マーケティングとセールス、サービスの重要性
本書では、マーケティングの他にセールスやサービスの重要性についても書かれています。なぜCRMにはマーケティング以外にセールスやサービスも重要なのでしょうか。一見すると全く関係ないように見えます。
それはマーケティングで需要を喚起して、セールスによって商品を供給して需要を満たし、なおかつサービスによって顧客と長期的な関係を維持できないと効果が薄いと本書では書かれています。
例えて言うなら、マーケティングで種をまき、セールスによって収穫もするが、サービスによってさらに長期的に大きく成長させるという発想です。
この3つが上手くかみ合うと効果的なCRMになるようです。ではどうすればこの3つを効果的に活用できるようになるのでしょうか。
顧客の属性ではなく、実際の購買履歴の情報を収集すること
顧客情報というと、本人の名前や住所、生年月日、これに付け加えるならパソコンのメールアドレスやちょっとした趣味嗜好などを思い浮かべます。本書ではCRMを効果的に利用するならこのような情報だけでは不十分だと書かれています。
なぜでしょうか。
本書では、顧客から収集したアンケートなどの、「こういった商品が出たら買いたい」といった「意向情報」では当てにならないとあります。
そのため、その顧客が実際に何を買ったのかといった実際の「行動情報(購買履歴等)」が必要とあります。
この「意向情報」と「行動情報」というものについて本書では次のように書かれています。
p.124
これは、顧客セグメンテーションにそもそもどんな情報を使うか、という大命題、最重要問題でもある。同じ価格感受性という軸で顧客を類別しようとするとき、
「値段が下がればもっと多く買いたい」という人間と「もっと多く買ったことがある」という人間とどっちをとるのかということだ。
何かをしたい、という意向の情報には撹乱要因が多く、さまざまなストレスがかかる。人の見栄・虚栄も入れば照れ・はにかみも入る
要は人の言った言葉よりかは、実際の行動の方が信頼できる情報であるということです。
情報の共有
昨今Tポイントカードやスターバックスが発行しているスターバックスカード。ドトールが発行しているドトールバリューカード。紀伊国屋書店が発行している紀伊国屋ポイントカードなど様々な企業がカードを発行しています。
これは顧客にカードの発行と利用を通して、顧客情報や購買履歴情報を集めて、顧客の動向を把握し、販売活動や営業に生かすためです。
このような顧客情報について、本書ではそれを利用するための「コード」が重要であると書かれています。
通常、企業では部署ごとに顧客や顧客企業などに対して採番していくことが多いのではないでしょうか。このコードがその部署だけしか使えないようだと問題です。
先にも書きましたが、CRMにはマーケティングだけではなく、セールスやサービスも重要なのです。そのため各部署を横断的に「情報共有」できるようなコード体系が望ましいとされています。
例えば顧客の立場で考えれば、違う店舗、違う担当者の度に一から説明していたのでは、効率が悪くイライラしてしまいます。
逆に違う店舗、違う担当者でも企業側で情報供されていれば、効率が良いですし、顧客の側も「あっ!?自分のことを覚えていてくれたんだ!」と感じます。
中小企業診断士の過去問でも同じような問題がありました。
「今まで収集していた顧客情報をどのように活用すべきか」
この問題の答えと、なぜこのような問題を出すのか、最初は全くわかりませんでした。しかし本書を読むことでCRMの概念や技術、背景を理解することができ、その問題の答えと意味がわかりました。
「あぁなるほど、だからこういう問題を出したんだな」と。
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