最近は大前研一さんの
- 『異端者の時代―現代経営考』
という本を読んでいました。この本は1994年頃出版されたもので、1994年というと日本においてバブル崩壊が起こってしばらく経っているという状況です。
そのような状況での出版なので、バブル崩壊による日本企業の問題点がいくつも挙げられています。
この頃から著者の大前さんは当時の日本企業に対して既に、単純な業務改善ではなくメーカーから小売を含めた川上から川下までのビジネスプロセスの再構築が必要であると本書では述べれられています。
本書は1994年の出版ですが、23年後の現在の企業においても全然通用するような内容であり、むしろ1994年の時点でこういったことが考えられた人だったんだなぁと感心しています。
今回は本書について思ったことを書いていってみます。
バブル崩壊後しばらく経った後の日本の状況について
バブル崩壊というとwikipediaの情報では、1991年3月から始まって1993年10月までの景気後退期を指すようです。
しかしそこから「失われた20年」という言葉もあるように、約20年以上経った今でも日本の経済状態は根本的に改善がなされたわけではありません。
「失われた20年」という言葉が今あるように、当時はそれはそれは大変な状況だったようです。
平成6年(1994年)の財界四団体主催の賀詞交換会というパーティーというのが東京や大阪の一流ホテルで行われたようです。そこでの財界の大物達に対して大前さんは次のような批判的なコメントを残しています。
p.17
「この不況をどうしてくれる。政治改革なんてほどほどにして、早く景気対策をやってくれ」の大合唱である。会社をおかしくしてしまったのは自分たちなのに、その責任は棚上げにしておいて、政府に「なんとかしてよ」のお願いだけだ。
レーガノミックス時代のアメリカにも、鉄の宰相サッチャー革命の嵐が吹き荒れたイギリスにも、こんな無責任な経営者はいなかった。そんな情けない経営者は株主総会で即刻クビ、黙々と会社のリストラに務めたトップだけが生き残っているのである。
自分は財界のことは知りませんし、株主総会にも出席したことはありませんが、当時の企業のトップが平然と責任を棚上げするような人たちばかりであったのなら「失われた20年」が生まれてしまったのは必然だったのかもしれないですね。
景気の悪いと言われた1992年において、日本の製造業の売上高利益率は2.9%ありました。それが市場開放や規制緩和、そして価格破壊が起こると、最悪ケースではマイナス4.8%に転落。
そういった状況下で従来型の対応をしていては生き残れない、ではどうするか、というのが当時のアメリカの事例を交えて日本企業が今後どうしていくべきかについて本書では述べています。
バブル崩壊後しばらく経った後のアメリカの状況について
バブル崩壊後の日本とアメリカの経済というのは、本書を見てみると完全に状況が逆転したことがわかります。
というのは70年代、80年代というのは「貿易摩擦」や「プラザ合意」という言葉があるなど、当時の日本企業がアメリカに対して強すぎて、逆にアメリカの製造業が壊滅状態に陥り、日本とアメリカの関係が良くなかった時代があったわけです。
しかしそういった状況は、アメリカのレーガン政権によるドラスティックな規制緩和などによって劇的に変わりました。例えばリエンジニアリングと言われる経営システムの見直しと情報化対投資などです。
レイオフを進めたり、ITなどの知的産業への重点的な投資によるIT企業の躍進ぶりなど、今現在のアメリカのIT企業の成長振りを見ればわかると思いますが、既にこの頃にその礎が築かれていたわけです。
日本とアメリカの逆転、アメリカの競争力について具体的な数字においては、当時の日本の賃金が約720万円なのに対して、アメリカは400万円とあります。
これだけ違っていれば日本が不況に陥るのもわかるというものです。さらに当時は、まぁ今でも日本というのはいろいろと保護される産業があるわけですが、この点についても苦言が呈されています。
デパートに対する青山商事の事例
バブル崩壊後の日本の惨状について、今後どうしていくべきか。その点について大前さんはデパートに対する青山商事の事例を紹介しています。
今でこそ「洋服の青山」として青山商事は有名ですが、バブル崩壊後はまだ今ほどではなく、当時の紳士服、スーツなども10万円以上というのはそう珍しいものではなかったようです。
10万円以上もする高級品を当時の青山商事は川上から川下までのビジネスプロセスの再構築によって、当時のデパートの「3分の1」の値段を実現し、業界を席巻しました。
この値段が実現できた要因は3つ書かれています。それは企画、ロジスティックス、アウトレット・マネジメントです。
つまり、青山商事のやったことのポイントは
- 自社だけではなくサプライチェーン全体を見据えた業務プロセスの再構築
です。
自社だけで業務プロセスを改善しても、それだけでは限界があります。自分の所だけで発生する費用を半分にできても、仕入れの商品が今までと同じ商品であれば、安く出来るのは自社で削減した分だけです。
ですが、仕入先の企業の選定やさらにそこでの業務プロセスの改善、そして販売先の小売店の選定や業務プロセスの改善など、川上から川下までのトータルな再構築により今までの2分の1のコストで商品をつくれるようになったわけです。
こうなると他社はなかなか太刀打ちできません。多少の値段の違いであれば、その会社のブランド力などで補えますが、値段が半分とか10分の1になってしまえば、水が高い所から低い所に流れるように消費者もそちらに流れてしまいます。
自社の商品だけを見ていると、どうしても業界全体を見据えた発想というのは出てこないものです。このやり方が当時日本とアメリカが逆転してしまった理由のひとつと言われています。
日本は今の企業を見ても分かるように、どうしても馴れ合いとか古い慣習に囚われる傾向にあります。だから業界全体を考えたビジネスプロセスの再構築というのはなかなか進まないと言われています。
現在の百貨店業界を見てみるとわかると思いますが、百貨店業界はここ20年ぐらいずっと右肩下がりの売上高になってしまっています。その原因のひとつが、このビジネスプロセスの再構築ができないことなのです。
百貨店業界に限ったことではありませんが、いかに「ゼロベース」で考えられかが今後の生き残りを考える上で重要であると本書では書かれています。
ビジネスプロセスの再構築には「機械に合わせる」という発想が必要

p.143
しかし前述したように企業は、業務改善によるコストダウンや、リエンジニアリングだけでは今後生き残れないのである。アタッカー企業になるためには異なった発想による、より広範囲のビジネスプロセスの見直しが必要になる。
具体的にそれはどのようなものか。まず第一に、人を中心とした業務プロセスを見直すのではなく、データベースと機械、つまりはIT/Sを中心とした機械が得意とする業務プロセスを組み、それに人が仕事のやり方を合わせるという発想の転換が必要となる。
たとえばFA、CAD/CAMなどといった設計や生産の自動化というものを見てみても、成功している企業はまず従来のプロセスを見直し、機械にとってスムーズなフローをゼロベースでつくった。
これに対し自動化が下手な企業は人手でやっていた切削作業や組立加工をそのまま自動化し、結果的にはあまり生産性が向上しなかった。人がやる工法・工程と機械とでは、やり方が自ずと異なるのである。
>つまりは
- IT/Sを中心とした機械が得意とする業務プロセスを組み、
- それに人が仕事のやり方を合わせる
という発想の転換が必要となる。
この文章を読んで思わずはっとさせられました。まさに「この発想はなかった」という感じです。
要は
- 機械が得意なことを人間がサポートしてあげるという発想、
- 人ではなく機械を中心に考える
ということです。今回の記事で一番伝えたい部分はここです。
例えば事務処理があります。今までの延長線上の考え方だと、ミスや間違いがないように、いかに文字をきれいに丁寧に書くか、早く処理できるようにいかに早く書けるようになるか、という発想にとどまってしまいます。
そうではなくて、例えばマイクロソフトのエクセルなどのソフトやシステム、機械などを導入し、完全に置き換えてしまえばそもそも
- 「いかに文字をきれいに書くか」
- 「いかに早く書けるか」
といった発想をしなくても済むわけです。
機械などで文字は全て一定の形で印刷することが出来ますし、エクセルの関数や機能を上手く使えば今までよりも何倍も何十倍も早く処理ができるでしょう。そもそも人の手を入れる部分を減らすというだけでミスが減ります。
そしてここがポイントなのですが、
- 「機械に合わせて人間が機械をサポート」
をする必要があります。そのためには、
- 機械の能力を活かす為に「機械に対する知識」
を「人間が身につけないといけない」ということです。
どんなに良いハードやソフトがあっても、それを人間が使いこなせなければ機能しないわけであり、企業にシステムを導入しても上手くいかない事例が多い理由のひとつと言われています。
システムさえ導入すれば、全てが上手くいくというわけではなく、そのシステムに合わせて人間がサポートしてあげられないといけないわけです。
なるほど、そうかぁ・・・と本書を読んでいて「機械に合わせる」という発想に感心させられました。
おそらくこういう発想がないと、既存の問題に対する根本的な解決ができないのだろうなぁと思います。
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