前回の記事では長時間労働、サービス残業の問題について書きました。以下が前回の記事になります。
サービス残業した場合の実質の時給
多くの人はこの問題に対して、企業側はけしからん、ちゃんと対価を払うべき、そんな会社にはいってはいけないと批判されると思います。
しかし批判ばかりしていては問題は解決しません。自分もこの問題についてはいろいろ考えていました。
「なんで企業はこんなひどいことをするのか」
あるときふとこんな考えが思い浮かびました。
「企業はそうせざるを得ないのではないか・・・」となぜこんな考えにいたったか、そもそもいサービス残業、長時間労働させるとどんなことが起こるのかちょっと計算してみました
ある社員が1ヶ月40万円の給料をもらっていたとして、通常は一日8時間、1ヶ月22日で計算して、1ヶ月の労働時間は168時間。これだと時給は約2380円になります。
この状態に長時間サービス残業を加えて、月400時間働かなければならないとします。
これで計算すると400,000÷400=1000
怖ろしい数値がでましたね。
つまり、実質時給1,000円になってしまうということです。(ちなみに自分が一番最初に働いていた企業ではもっと時給が低い計算になってしまいました・・・)時給だけ見たらアルバイトと変わりません。
実際こういうことはよくあります。インターネット上でも「サービス残業」という言葉はよく目にしていましたし、自分が新卒で入った外食産業の会社の店舗でもサービス残業をしない日ありませんでした。
日本には「過労死」という言葉があるように、死ぬまで働かされる人もいる国です。サービス残業が常態化している所も多くあるでしょう。
これらのことを考えたとき
「ああ、企業は給与の額面は法律の縛りがあって減らすのが難しいけど、目には見えづらいこういった形で人件費をカットしているのではないか」と思いました。
日本の法律では、労働者側が非常に守られていると言われています。企業が一度労働者を正社員として雇った場合、よっぽどのことがないと解雇できないのです。
正規社員の解雇規制緩和論
日本で正社員がなかなか解雇できない問題に対して、現在「正規社員の解雇規制緩和論」といった問題が議論されています。wikipediaには以下ように書かれています。
日本では労働力の調整に非正規社員を利用することが社会で認められており、企業が正規社員を整理解雇する前に非正規社員の解雇(派遣切りや雇い止め)をすることは整理解雇の四要件を満たすために必要であったが、
2008年の金融危機が発端となった世界的不況による経営の悪化が引き起こした大量の派遣切りは社会問題となった。
この時の派遣切りに非難が集まり非正規社員の雇用に対する規制を強化することが議論されたが、規制強化はより規制の弱い雇用形態への変更や機械による代替、コストの安い海外への移転が起こり雇用量が減少してしまうと考えられている。
労働者を雇用している企業は経営状態が悪化した時に整理解雇を行う場合があるが、正規社員の解雇は整理解雇の四要件が判断の基準となっており、
要件の一つの解雇回避努力義務には、非正規社員の削減と新規採用の停止をすることが求められている。
このように非正規社員は整理解雇時には真っ先に解雇される不安定な立場に置かれているが、正規社員は解雇規制で保護されて比較的に安定しており、雇用の二極化という格差を作り出している
正社員を解雇する場合には「整理解雇の四要件」という条件を満たさなければならず、これが非常に厳しい条件のようです。
これは一見すると労働者側、企業側から見て被雇用者にとってかなり有利な条件、むしろ被雇用者の過剰保護ではないかのようにすら見えます。
ですが他社との競争を考える場合、必ずしも全てが被雇用者にとって良いことばかりではないように思われます。
なぜならこのような過剰保護が、製品の需要に対する供給を労働者の数ではなく、解雇できない正社員の勤務時間で補っているから、それはつまり長時間労働に繋がっていると考えられるからです。
企業が従業員に長時間労働させる理由
これだけ見たら「企業側はなんてひどいことをするんだ」と思いますが、なぜこんなことをするのでしょうか?利益を抱え込むため?株主の要求?上司が上司自身の評価を上げたいため?
他になんらかの理由があるのでしょうかこの後もいろいろ考えてはいました。上にも書きましたが、
「企業側はこういうことをせざるを得ない」何かがあるのではないか、それは何なのか?もちろん法律的に正社員を解雇できないという理由は挙げられるのですが、自分が考えているのはもっとその先の深い理由です。
いくつかの理由としては
- 差別化できなくなっている
- 価格競争に陥っている
というものが考えられます。というのは、簡単に利益が出る製品をつくれる企業であれば、従業員に長時間のサービス残業をさせて、1時間あたりの人件費を下げる必要はないと考えられるからです。
こういった問題に対して長時間労働や、サービス残業などで、なんとか目先の問題を回避してはいますが、こういったやり方が10年20年続くとは考えられません。
そのことについて次回書いていきたいと思います。
以下が続きの記事になります。
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