『デルの革命―「ダイレクト」戦略で産業を変える』における中間業者を排除することのメリット

マイケル・デルという人物とデル株式会社について

p.9

私は高校の卒業資格を郵便で取り寄せようとした。その時私は、まだ小学校三年生だった。

 

きっかけは、雑誌の裏表紙に載っていた広告である。そこには「簡単な試験に合格するだけで、高卒の資格が取れます」とあった。といっても別に、学校が嫌いだったとか、そういう話ではない。

(中略)

だが、その頃の私は、せっかちで好奇心が強かった。何をやるにしても、もっとすばやく簡単にできる方法があるなら、それを試してみたかった。九年間の学校生活の代わりに「簡単な試験」で済むなら、なかなか悪くない考えのように思えたのだ。

『デルの革命―「ダイレクト」戦略で産業を変える』の上記の文を最初読んだ時は、「この発想はなかった」と感じ思わず笑ってしまいました。

 

確かにそうですね。自分もいろんなことに「なぜこれほど待つ必要があるのか?」と考えることがあります。

 

もし多くの人が、「学ぶ方法」を学び、その価値に気づき、自分から積極的に何事も学習できるようになったら、学校とかいらなくなってしまうかも・・・

 

そうしたら、教師とか、学校を建てる会社とか、学校を維持する関連の会社、その他公的な機関含めて諸々の人たちの職がなくなってしまうかも・・・

 

そういった人たちの雇用を維持するために、テレビとかメディアでは「物事を覚えられるのは20歳まで、それ以降は人間は物事を覚えられないから諦めるしかない」と、多くの人の能力を制限するためにそのように言っているのかも・・・

 

なんて妄想を時々することがあります。実際はどうかはわかりませんが(笑)話が脱線してしまったので元に戻します。

 

上記の文は『デルの革命―「ダイレクト」戦略で産業を変える』の一番最初の出だしのページで、デルの創立者、マイケル・デルがまだ子どもだった頃の話しから始まっています。

 

デルという会社は、小売店や卸を介さずに顧客に直接パソコンを販売する「ダイレクト・モデル」というビジネスモデルを採用していることで有名です。

 

中間業者を入れない分マージンを取られず、顧客にその分を安くしてパソコンを販売することができます。他にも直接顧客に販売できることで様々なメリットがありますが、そのことについてはまた別の場所で書いていきます。

 

冒頭の引用文から何を伝えたいかというと、マイケル・デルは子どもの頃から既に「ダイレクト・モデル」の基礎となるような考えを持っていたということです。

 

他にも本書には「幼い頃から、私は不必要なステップを省略するのが大好きだった」といった文があります。

 

以前以下の過去記事で「あるべき姿」を構想するにはどうすればいいかを考え、自分なりの答えとして、「手本となるような企業について勉強すればいいのではないか」という結論に達しました。

では、具体的にどういった企業が良いかというと、『システム・シンキング入門』に「デル株式会社」について書かれていたので、とりあえずこの会社について調べようと思い、ここ最近はデルという会社についての本を読んでいました。

 

今回の記事では、このデルという会社について書いていってみます。

『デルの革命―「ダイレクト」戦略で産業を変える』の構成

本書は第Ⅰ部と第Ⅱ部に分かれています。第Ⅰ部はデルがどうやってここまで成長したのかといった成長過程について書かれており、第Ⅱ部はその成長過程についてより掘り下げた内容が書かれています。

 

2016年時点でのデルの状態なのですが、いろんなニュースを見ているとあまり状態は良くないようです。やはりパソコンを販売するという、ハードの面は今後は厳しいということでしょうか

 

本書は1999年に出版されているので、デルという会社ができてから1998年ぐらいまでの成長過程について書かれています。

 

今回の記事では、おおまかにどうやって成長してきたのかについて触れて、それ以降は、できる範囲で

  • 組織・人事面
  • 流通・マーケティング面
  • 生産・技術面

に焦点を当てて書いていってみます。というのも中小企業診断士2次試験は、「組織・人事」「流通・マーケティング」「生産・技術」に加えて「財務・会計」の分野で問題が出されるので、

 

これらの視点でいろいろな過程を見れた方が、後々役立つかなと思いました。

デル株式会社が生まれるきっかけ

道路の先にある森の中から差し込んだ太陽の光

冒頭の所でも触れましたが、デルという会社は直接顧客にパソコンを届ける「ダイレクト・モデル」というビジネスモデルを採用しています。なぜダイレクト・モデルを採用したのか?

 

創業者のマイケル・デルは、事業を始める前に、その「価値」に気づいていたからです。その価値に気づくエピソードはいくつかあるのですが、次の2つのことが本書には書かれていました。

p.15

1970年代当時、私たちの家では・・・

(前略)

当時ヒューストンの経済は絶好調であり、収集品市場は非常に活発だった。私が見聞きした限りでは、切手の価格が上昇しているのは明らかだった。かなり目先の利く子供だった私は、これはチャンスだと思ったのである。

(後略)

オークション主催者はかなりの手数料を稼いでいるのだろうと見当をつけた。

切手を買って彼らに手数料を取られるよりは、自分自身でオークションをやった方が面白いのではないかと私は考えた。そうすれば、切手についてもっと詳しくなれるし、その一方で手数料も稼げるかもしれない。

この時の、他のオークションを介さない独自の切手の販売で、デルは2000ドルの稼ぎを得たとあります。

 

この時に「中間業者を排除することがいかに大きなメリットになるかを早くも思い知らされたのである。」とあります。

 

もうひとつのエピソードとして1980年前半の当時のIBMのパソコンの販売価格に関するものがあります。

 

マイケル・デルは子供の頃から機械やパソコンを分解したり、いじったりすることが好きだったようで、その頃から内部の部品、仕組み、部品ごとの価格も把握していたようです。

 

そのため、当時IBMが出していたパソコンの価格は、独自の技術というわけでもなく、卸や小売店で上乗せされているマージンを考えてもその販売価格は高すぎであるとマイケル・デルは感じていました。

 

そこで自分が組み立てて直接顧客に販売した方が上手くいくと思ったようです。実際、マイケル・デルのやり方を聞きつけた周囲の人間からパソコンの注文や修理の依頼が殺到し、少しずつ「これはいける」という確信を得ていきます。

 

これらの出来事がきっかけとなり、1984年5月にデル株式会社の前身となる「株式会社デルコンピュータ・コーポレーション」が生まれます。

 

この続きはまた次回に。

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