物事には周期があると言われています。例えば「四季」というものがあります。春・夏・秋・冬のあれです。
時間が経つごとに一定の間隔でぐるぐる回っていくイメージでしょうか。
ですが、もっと長いスパンで物事を見てみると、一見すると同じように変化しているようにしか見えないのだけれど、一段うえの段階に到達ししているものもあります。
人間の歴史はこのように「螺旋状に発展してきた」と言われています。以下の過去記事では顧客関係管理(CRM)の重要性を認識するようになったと書きました。
今回は、その螺旋状の発展と、顧客との関係について書いていってみたいと思います。
顧客関係性の進化
最初以下の図を見たとき、思わず「なるほどなぁ」と感心してしまったので引用してみます。
p.26
『CRM―顧客はそこにいる (Best solution)』から引用
昨今顧客のニーズに対して企業が対応していくべきなのかといった問題や、こういう風に販売していけばいいといった手法の問題など、企業と顧客との関係性について多くの本が出版されています。
上記の図からわかるように、時間が経つにつれて企業と顧客との関係性の変化の様子がわかるかと思います。この図について簡単に説明していきます。
第一段階
イギリスで産業革命が発生してからの人類というのは、図の第一段階にあるように、「少品種大量生産」の歴史でした。
当時の人々は、今を生きる我々に比べれば圧倒的にモノが不足していました。そのため顧客が何が欲しいかを深く考える必要がなく、「作れば作るほど売れる」という少品種大量生産の時代でした。
第二段階
そして時が経ち、ある程度モノがいきわたってくると図の第二段階に入ります。この段階では、多くの人々にとってある程度モノがいきわたってくるということと、ニーズの多様化が見られるようになります。
ですから、顧客の嗜好をよく観察し、ニーズにあった商品やサービスを供給していく必要がありました。(多品種少量生産)
このように段々とモノがいきわたってくると、企業と顧客の力関係が徐々に逆転していくようになります。
今までは供給する側の企業が顧客に対して、圧倒的に権力を持っていました。モノを持っていなければ、モノを持っている人に頭を下げなければいけません。
ですが、必要最低限のモノを持てるようになれば、「別にその企業じゃないといけない」ということもなくなってくるわけです。
個人的に、このように今まで理不尽な扱いを受けていたが、何らかの要因によって力関係が逆転していく、という現象を見るのはわくわくします。
第三段階
そして第三段階へと企業と顧客の関係が進化していきます。この第三段階については、『CRM―顧客はそこにいる (Best solution)』では以下のように書かれています。
p.27
この第三の段階で供給者がとるべきアプローチは、「顧客に対する」のではなく「顧客の側に立って」、顧客の購買を導くことである。
そこには三つの能力、すなわち顧客の思いを理解する能力、高度な専門知識に基づいて商品・サービスを理解する能力、そして顧客の思いを商品・サービスへと翻訳する能力が求められる。
この三つの能力を持った供給者は「エージェント」という呼び方が最もふさわしい。すなわち供給者と顧客との関係性は、「購買のエージェント」へと進化するのである。
これらの文章を見たとき目から鱗でした。「言われてみれば、世の中の物事は確かにそうなっていっている感じがする」と感心せずにはいられませんでした。
別の視点から見ると、これからを生きる私たちには上記のような「能力」が求められてくるということでしょう。
この段階の生産方法は「マス・カスタマイズ」となっています。簡単に言ってしまえば、個人個人のニーズに合った商品をつくっていくというイメージです。
詳細については以下の過去記事を読んでいただければと思います。
最後の第四段階の詳細については本書を見ていただければと思います。
顧客の知恵を借りる━ナレッジマネジメント
以前に田坂広さんの『これから何が起こるのか』を読んでいたときに、今後の市場というのは「顧客の知恵」を借りる必要がある、といった文章を見つけたのを覚えています。
それが以下の文章です。
p.215
「顧客の知恵」を借りる企業が市場を創造する
では、ナレッジ・マネジメントの第三段階の進化は何か。
「顧客のナレッジ・マネジメント」への進化です。
その対象を「企業内の知恵」から「異業種の知恵」へと広げていったナレッジ・マネジメントは、さらに対象を、「企業の知恵」から「顧客の知恵」に広げていきます。
言葉を変えれば、ナレッジ・マネジメントは、「企業内の知恵を活用する」という段階から、「異業種の知恵を集める」という段階、そして、「顧客の知恵を借りる」という段階へと進化していくのです。
『CRM―顧客はそこにいる (Best solution)』の26ページの図を見たときに、田坂さんが「なぜそう言っているのか」がなんとなくわかってきました。
「なるほど、そういう意味か。そういう流れがあったのか」と。
発想の転換━商品やサービスを創っていく「パートナー」
これからは顧客を下に見るのではなく、供に商品やサービスを創っていく「パートナー」として仕事をしていく必要があるようです。
アマゾンの書評の事例
例えばアマゾンでは、そこで販売されている本について企業側が書評を書いているのではなく、その本を購入した読者が自分から書評を書いてくれています。
自分もアマゾンで本を買う時は、読者が書いてくれた書評を非常に参考にさせていただいています。
ニコニコ動画やyoutubeの事例
ニコニコ動画やyoutubeも同様でしょう。例えば既存のマスコミやテレビ局といった企業側が番組をつくるのではなく、動画をつくるのは一般の多くの人々です。
自分もニコニコ動画やyoutubeではためになる動画や面白い動画など、多くを見させていただいていますが、企業側は動画をつくってくれる人のサポートが中心です。
その両者によってつくられた動画から互いに広告収入を得たり、動画をつくった人が評価されて新たな仕事を得られたりと、いろいろなメリットが見られます。
これらの「顧客関係の進化」の一連の流れを見たとき、今までのような「いかに大量に安くつくるか」という一方的な発想から「いかに個客を理解できるか」という双方向的な発想が求められてくると思われます。
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