『チェンジ・ザ・ルール』からわかる「先駆的、新奇的、型破りな考え方」という競争優位性

今回は以下の記事の話の続きです。なるほど、「考え方」というものが「競争優位性」を持つなんて発想が自分には今までなかったので取り上げてみました。

上記の記事と同様に『チェンジ・ザ・ルール』の中の話です。この本はBGソフト社というERPソフト開発企業のスコットという人物を中心に会社が年40%成長を達成するために日々悪戦苦闘していく話です。その中で以下の部分を要約しました。

ピエルコ社へのERPシステム導入の効果

ピエルコ社はBGソフトからERPソフト(企業の持つ様々な資源を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す業務ソフトウェアパッケージ)とドラムバッファーロープ(全体の生産計画をボトルネックとなる最も遅い工程に合わせるやり方)を導入して生産高が以前よりも40%増えました。

 

しかしここで問題が生じます。生産高が改善されても販売まで改善されたわけではないので流通、この部分の話では倉庫に大量に在庫が溜まってしまうようになります。

 

そのような状態なのになぜか欠品も多く発生してしまいます。ピエルコ社の部長のブライアンという人物はこの問題を解決するには正確な販売予想が必要だと考えます。

 

それができれば、適正な在庫量を確保でき欠品もなくなると。ですが、BGソフトの担当者からは「完璧な販売予想など無理」と一蹴されてしまいます。

 

また、別の問題に気づきます。在庫の目標レベルです。目標レベルが設定されたのは何年も前で、当時生産能力を基準に決定されたものでした。

 

昨年は倉庫への補充時間が大幅に改善されたので必然的に倉庫の在庫レベルも低くて済む。生産量と補充時間の改善で大量に在庫が溜まってしまったということです。

 

そのため在庫レベルを今の状態を基準にして四か月分から二か月分へと見直しました。さらにここで問題が発生します。

 

今度は在庫不足になり欠品が増加します。ではどうするのか。ここで北米地域の全店舗の売上合計を利用するという方法をとります。予測の精度はサンプルが少なければ少ないほど落ちます。

 

しかし統計学的に母集団が大きければ大きいほど精度は増して変動も小さくなります。その精度を出せて、なおかつ在庫を置ける所はどこかということに対してBGソフトのスコットという人物はピエルコ社の「工場」だと答えました。

 

各拠点の倉庫や販売先でなく、北米地域を全てカバーしている工場なら精度は高いだろうということです。ですがピエルコ社の方針では顧客までの配送には時間がかかりすぎるので、在庫は各拠点の倉庫に置くことになっています。

 

その問題を解決するには従来型の販売量を予想して生産する

  • プッシュシステム

ではなく、受注した分だけ生産して補充する

  • プルシステム

という方式をとります。

 

ここで工場に在庫を置くようにするので在庫が増えるのではないかと思いますが、全体としては減少させることができます。

 

ピエルコ社では今まで倉庫に10週間分の在庫を保管していましたが、プルシステムという毎日不足分を補充するというやり方によって、倉庫の在庫とトラックで配送中の在庫で2週間分の在庫で済むようになるというわけです。

 

これらの改善で5億ドル以上の現金が手元に残せるようになり、在庫の欠品などもなくなったのです。

「新しい考え方」という競争優位性

個人的には以下の文章が一番印象に残ったのでそのまま引用します。上記のピエルコ社へのERPソフト導入と問題解決に対してBGソフトのゲイルとマギー、レニー、スコットという人物との間の会話です。

ゲイル「でも、そんなことはどうでもいいんです。重要なのはなぜ、他社が私たちの真似をできないかです。私にはまだその理由がよくわかりません」

 

マギー「考え方よ」

 

レニー「ソフトウェアのエンジニアが新しいプログラムを書く時に考えていることは一つしかない。いかに高度で洗練されたソフトを作って、みんなを感心させるかだ。ユーザーがそれを使ってどれだけ利益が増えるかなど、彼らの頭の中にはこれっぽっちもないさ。

 

たとえば、我が社のAPSモジュール(生産スケジュールを決めるシステム)だ。はっきりした結果を出すには、ボトルネックだけを最適化すればいいと、何度彼らに説明したかわからない。

 

それでも、まだ余分な機能をたくさん載せようとしてくる。それを取り除かせるのに何度喧嘩したか数え切れない。何百あるワークセンター全部を最適化したほうが、ボトルネックを一つや二つ最適化するより、そりゃ周りはずっと感心するさ」

 

レニー「流通はどうなんだ?いろいろ変更したじゃないか。それなのに、プログラムコードを追加する必要はほとんどなかったぞ。消去したコードはたくさんあったが…。エンジニアの連中がそれにどれだけ反対したか、君にも見せてやりたかったよ」

 

スコット「そうした考え方があるから、他社は我々の真似をすることができない。そういうことだな。」

 

レニー「そうだ、たとえ我々のプログラムの中身を彼らにそのままコピーさせたとしても、すぐにあれもこれもと機能を追加し始めるに違いない。現場での使い勝手など、一切無視だ」

引用ここまで

なるほど、言われてみれば確かにそうかもしれません。自分も大学生で就職活動した中でIT企業をいくつか訪問したときがありました。

 

大学生のIT企業への就職活動というと

  • 「SE」や「プログラマー」
  • 「どういったシステムを作っている会社なのか」
  • 「どんな優れた機能があるのか」
  • 「プログラミング言語は何が必要なのか」

といったイメージを持たれた人が多いのではないでしょうか?

 

自分がまさにそうでした。システムの機能というのは多ければ多いほど、すごければすごいほど良いという風に。

 

そのシステムが導入されることによって、ボトルネック工程を改善し、それに工場全体を同期化させてリードタイムが短縮し、その分在庫を持たなくてもよくなって100億の現金を手元に残せるようになった、だからこのシステムで100億円の現金を生み出せます、なんてこれっぽっちも考えたことがありませんでした。

 

IT企業へ就職活動した時の社員の方は皆頭がよさそうで品があり、大学時代に工場で泥臭くアルバイトして苦労していた時があった、というイメージは全くなく、そのような話も聞かないので、やっぱり現場の経験とか相手の立場に立って考えられるというのは本当に貴重なのかもしれません。

 

だから「考え方」、もっと言えば、今までにない

  • 先駆的
  • 新奇的
  • 型破りな考え方

が競争優位性になるうるのだなと思いました。

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