今回の記事名は「未来とは本来、支配者たちがその支配を失うこと」という名前にしましたが、これは『キュレーション 収集し、選別し、編集し、共有する技術(著スティーブン・ローゼンバウム)』の中にあった一文です。すごく良い言葉だなと思ったので取り上げてみました。
人類史上何度も起きた、クソ労働環境の劇的な改善の原因
以下に関連のある記事を引用します。
人類史上何度も起きた、クソ労働環境の劇的な改善の原因 – 分裂勘違い君劇場
「ここで重要なのは、近隣の古い村落の農民が、その好待遇に釣られて流出し始めたという点です。
これに危機感を感じた領主達は、農民の流出を防ぐため、古い村落の農民にも、同じ待遇を与えなければならなくなりました。
領主と農民の間の権力ゲームにパワーシフト*1が起きたのです。」
引用ここまで
上記の引用した記事は結構前にブックマークしたものです。すごく納得して何か機会があればなと思っていました。上記の記事を要約すると
記事の内容は1000年程前のヨーロッパにさかのぼります。かつてその土地で多くの農業労働者たちが土地を開墾して働いていました。
他にも賦役労働といって、農業以外にも領主の屋敷や修理など様々な仕事が課されていました。その有様は奴隷のようであり、非常に劣悪な労働環境だったとのことです。
しかしある時、農民たちの農民の社会的法的地位は、革命的に向上しました。何があったのでしょうか?その原因として以下引用
「結局の所、農民の待遇を革命的に改善した原因は、開墾という新規ビジネスの立ち上げが創出した雇用であり、人手不足であり、労働力の需給バランスの変化でした。
開墾という新規ビジネスの立ち上げを、ヨーロッパ中の領主が一斉に始めたために、ヨーロッパ中が人手不足になったのが原因だったのです。」
引用ここまで
記事内では新規ビジネスによる人手不足とありますが、自分の考えは少し違っていて、「農民たちが力を持った、もしくは『複数の選択肢を持てるようになった』から」他の領主は農民をつなぎ止めておくために待遇を良くせざるをえなくなった、
その結果農民の待遇が良くなった、そしてパワーシフトが起こった、のではないかと思っています。
人間というのは複数の選択肢が目の前に提示された場合、普通は自分にとって都合が良い方を選ぶと思います。いろいろその人ごとに基準はあるでしょうが基本良い方を選ぶでしょう。
ヨーロッパの農民の話も、ある領主が森を切り開き畑にし始めます。しかし人手が足りないので人を募集し始めます。農民は今までは一つの土地でしか働けず、その収入もその土地の領主の搾取によってわずかなものでした。
しかし、より収入が多く労働環境が良い選択肢があればその選択肢を選ぶのが普通です。特に今までの環境が悪ければ悪いほど。ここで旧領主の支配は終わったわけです。
「それしかない」と思い込まされていないか?
一般的に、多くの人は「良い大学に入って良い会社に行けば将来安泰だ、だから勉強しなさい」と言われた経験があるのではないでしょうか?
会社に勤めたら勤めたでその会社に定年まで働くのが普通で、転職はしても1回か2回、じゃないと経歴に傷がついて良い会社には勤められない、と。
本当にそうなのでしょうか?成果主義が日本にも導入されるようになった、と言われるようになりましたが、自分の経験と知人から聞いた範囲では企業の体制というのまだ明らかに年功序列です。
企業は新卒で大学生を取るのがいまだ一般的であり、中途で入るのが難しいのがその表れでしょう。多くの人が現在の労働環境や企業体制に不満を持っています。
それに対して、転職したり、労働基準監督署に訴えたりしていますが、あまり抜本的な改善には繋がっていないようです。まさに相手の術中にはまっているように思えます。
そこで自分は思うのです。今後「個人が『新しい選択肢』を持てるようになったらどうなるのか」。
現在は企業に力がありますが、今後、個人で働く環境が何らかの形で整備され、個人が企業に依存しなくてもよくなったらどうなるのか、と。
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*1:パワーシフト:米国の未来学者アルビン=トフラー氏が1990年に発表した著書「パワーシフト―21世紀へと変容する
知識と富と暴力」に書かれていた言葉です。その意味は、今までのような財力や権力を持っていた人たちは段々とその力を失い、これからは知識や情報力を持つ者が支配力を持つ時代になるだろうということです。
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